スパイに憧れたウクライナ人少女が、キアヌ・リーブスの「先生」になった本当の話
“I Trained Keanu Reeves”
その後、私は教える能力を評価されて、タランの下で銃器トレーニングの指導者を務めるようになった。やがてキアヌが、シリーズ第4作『ジョン・ウィック──コンセクエンス』(日本では今年9月に公開予定)のための銃器トレーニングを受けに私の所へやって来た。
現実とは思えない経験だった。「いま私は、自分に強い刺激を与え、私の人生を変えた人物の1人と同じ部屋にいる。それなのに、相手はそのことを全く知らないのだ」と思った。
キアヌは、私がこれまで出会ったなかでも指折りの謙虚で真面目な人物だ。全身全霊をかけて演技の仕事に臨んでいる。キアヌのトレーニングを担当するのは、刺激的で素晴らしい経験だった。
キアヌは、『ジョン・ウィック──コンセクエンス』の銃器トレーニングのために、週に1回、アクション映画の演技指導で有名な87イレブン・アクション・デザインでの過酷な武術トレーニングを終えてすぐに駆け付けた。
2種類の別々のトレーニングを立て続けに受けるというのは、本当に強い思いがなければできないと思う。
あるとき、1日の激しいトレーニングを終えた後、私はキアヌに打ち明けた──あなたのジョン・ウィック役の演技のおかげで、私の人生は変わりました、と。
キアヌは驚いた様子で言った。「何だって? 冗談ではなく? 僕の映画が誰かの人生を変えることなんて本当にあるの?」
私は答えた。「もちろん! いま話したのは私の人生の物語。でも、ほかにも同じような経験をした人はたくさんいるはず」
キアヌが素晴らしいのは、戦闘と銃器の扱いがとてもリアルなこと。本人も語っているように、あまりにも難しい場面ではスタントを使うこともあるけれど、キアヌはいつも徹底したトレーニングを行い、最善を尽くしている。