卵子凍結は、本当に必要?
You (Probably) Shouldn’t Freeze Your Eggs in Your 20
卵子凍結はできるだけ早いほうがいいとクリニックは言うが…… PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS BY KOYA79/ISTOCKーGETTY IMAGES PLUS AND MIALAPI/ISTOCKーGETTY IMAGES PLUSーSLATE
<「賢い女性であれば、当然やること」と若い女性に勧める風潮があるが、30歳代前半まで待っても妊娠できる確率に変わりはない。むしろ重要なのは、卵巣予備能を知ること>
イザベル・メディナはつい最近まで、自分の卵子を凍結保存することなど考えたこともなかった。だが個人資産管理に関するポッドキャストを聞いていたら「卵子の凍結保存は未来の自分のための保険のようなもの」という話が出てきて、メディナは興味をそそられた。計画を立てて心の平穏を得るのが好きなのだ。
メディナは25歳。仕事は順調だし、データサイエンスの修士課程に入るところだ。だが子供が欲しいかどうか自分でもよく分からないし、将来子供を持つとしたらそれがいつになるか見当もつかない。
「これ(卵子凍結)をすれば、いろいろな可能性について検討するための時間を稼げるかもしれない、ということに思いが至った」と彼女は言う。
メディナのように若くてしかも病気などの理由がないのに、卵子の凍結保存をする女性は確かにいる。卵子凍結を手がけるクリニックは「これは老後に備えた貯金や自動車保険への加入と同じで、賢い女性であれば当然やるべきことだ」と主張して、できるだけ多くの人をその気にさせようとしている。
クリニックは20歳代の女性向けにブログやSNSで、「卵子を凍結保存するならできるだけ早いほうがいい」と呼びかけたりもしている。TikTok(ティックトック)の若いインフルエンサーが、自分の卵子凍結の経験を投稿することも珍しくない。
確かに卵子凍結は35歳までにやるのが理想的だという点で、多くの専門家の意見は一致している。加齢とともに女性の妊娠する力が衰えるのには2つ理由があると、ニューヨーク大学ランゴン不妊治療センターの研究員、セーラ・カスカンテは言う。
1つ目の理由は、体内の卵母細胞(卵子の元になる細胞)の数が年齢とともに減少することだ。
2つ目は卵子の質の問題だ。若い女性の卵子のほうが健康な胎芽へと成長しやすい。「年齢が上がると染色体に問題が起きやすくなり、流産したり、そもそも妊娠に至らないという結果になりやすい」とカスカンテは言う。
これを卵子凍結に当てはめれば、若いうちにやっておけば質のいい卵子を保存できて、のちのち妊娠・出産の成功率が高くなる、という話になる。
保管の費用も高くつく
ところが女性の妊娠する力は、加齢とともに真っすぐ右肩下がりに落ちていくわけではない。「33~34歳くらいまではほとんど変わらない」と言うのはヘブライ大学(イスラエル)の専門家、アビ・ツァフリルだ。