卵子凍結は、本当に必要?
You (Probably) Shouldn’t Freeze Your Eggs in Your 20
メルボルン大学(オーストラリア)の専門家、アレックス・ポリャコフも、「卵子凍結を25歳でやろうが32歳でやろうが大した違いはない。(採取できる卵子の)数も質もたぶん変わらない」と語る。
後年、患者が子供を産む用意が整ったところで、医師は卵子を解凍し、人工授精を行い、患者の子宮内に受精卵を戻す。「(卵子の)全てが生き延びられるわけではない」とツァフリルは言う。
そうした手順を踏むなかで卵子が傷んでしまうこともある。つまり卵子を凍結保存したからといって将来の保証は何もない。そこで重要になるのが、凍結する卵子の数だ。
ボストンの不妊治療クリニックで行われた520件の人工授精のデータを基にしたこんな推計が今年、発表された。34歳で20個の卵子を凍結保存した場合に人工授精で子供を授かる確率は92%なのに対し、30歳で20個の卵子を凍結した場合は98%で、大した違いはない、というものだ。
卵子凍結を行うのはもっと年長の女性が多いことから、若い女性に関するデータは実際の患者から得られたものではなく、モデルを使った推計によるものが大半だという点も頭の片隅に入れておいたほうがいいだろう。
また、20歳代で卵子を凍結保存することには明らかなマイナス面もある。保存期間が長くなって費用が余計にかかることだ。ニューヨーク大学ランゴン不妊治療センターでは、卵子の保管費用は1年当たり1000ドルだ。
保存したのに結局は使わないというケースも多い。複数の論文や研究者の推計によれば、凍結卵子が実際に使われる割合は9~30%。若い女性であれば、凍結卵子を使う可能性はさらに低いかもしれないとポリャコフは言う。
2021年に発表された小規模な研究によれば、凍結卵子を使わない理由は主に2つ。1つは、結婚相手が見つからなかったから。もう1つは自然妊娠したからだ。
専門家は30歳前後で卵子の凍結保存を検討している人に対し、卵巣予備能の検査を受けることを勧めている。これは血液検査でホルモン値を測り、そこから1回の採卵でいくつくらいの卵子が取れるか推計するというものだ。
結果次第では、急いだほうがいいことが分かる場合もある。
「30歳の時点で(卵巣予備能が)低いのに35歳まで待っていたら、さらに低いレベルになってしまうだろう。その時点で凍結保存しても大した数の卵子は残せないかもしれない」とカスカンテは言う。
卵子を凍結保存したからといって将来子供を持てるという保証はないし、カネの無駄遣いにならない保証もない。でもどうせやるならば、予備知識を得た上でやるに越したことはない。