「ヘルシーな食生活はお金持ちだけのものではない」──食に責任ある社会をつくるアプリの挑戦
“Healthy Eating Shouldn’t Be a Privilege”
説教がましくならずにヘルシーな選択を促したいと、デシャネルは考えている SAMI DRASIN/GETTY IMAGES
<健康にいい食べ物が物理的にも経済的にも手に入るだけでも恵まれている。2児の母でもある女優ズーイー・デシャネルが乗り出した、ヘルシーな食品を全ての人に届ける挑戦>
私は子供の頃、ヘルシーな食べ物をたっぷり食べて育った。両親は共に美食家で料理上手。母はいつも家で自家製のパンを焼いてくれたし、父も料理や新鮮な食材にこだわりがあるタイプだった。
大人になっても、私はずっとヘルシーな食生活を実践してきた。倫理的な理由でビーガン(完全菜食主義者)の生活を送った時期もあったけれど、そうした食生活を長く続けるのは難しく、魚は食べてもよいことにした。おかげで、レストランで注文するメニューに困ることは少なくなった。
最初の子供を妊娠したときは、ヘルシーな食生活を徹底した。私の場合、妊娠中に食べ物の嗜好が奇妙に変わることはなかった(普段は飲まないレモネードを欲しがったこと以外は)。
この時期は、自分とおなかの子供の安全のためにと思って、なるべく精製していないオーガニックの食材を食べるよう心がけていた。私はずっと、食べるものの原料と産地に気を配っていたけれど、正確な情報を得ることは難しかった。
ヘルシーと銘打っている食べ物のパッケージを見ても、原料の情報がはっきりしないことも多かった。実際に用いられている原料が、パッケージの言葉からイメージするものと異なるケースも少なくなかった。
この原料は人工? それとも天然? 途方に暮れることもしばしばあった。スーパーの店頭で商品をチェックしてヘルシーな選択をするためには、高度な専門知識が必要だと思うこともあった。
レストランでも事情は似たり寄ったりだった。食材がどこから来ているのかとスタッフに尋ねても、「えーっと......トラックですよ」といった返事しか戻ってこなかったりする。私が食べているものについての正確な情報は、誰も持っていないように見えた。
もう1つ気になり始めたことがあった。私が暮らすカリフォルニアでは新鮮な野菜がたくさん採れるし、幸い、私にはそのような野菜を買えるくらいの収入がある。
でも、そんな人ばかりではない。「フードデザート(食の砂漠)」と呼ばれる地域で暮らしている人たちは、栄養価の面で好ましい食べ物を適正価格で入手することが非常に難しい。ヘルシーな食べ物が手に入る環境にいるだけでも、自分がとても恵まれているのだと思うようになった。
ヘルシーな食生活を送ることは、一握りの人だけが手にできる特権ではなく、誰にでも認められる権利であるべきだと、私は思っている。