最新記事

キャリア

3人の女性首相が世界に示した、「辞めたい」と言える勇気

Needing to Admit It's Too Much

2023年04月27日(木)14時16分
イモジェン・ウェストナイツ(ジャーナリスト)
アーダーン首相,マリン首相,スタージョン首相

(上から時計回りに)ニュージーランドのアーダーン首相/フィンランドのマリン首相/スコットランド自治政府のスタージョン首相 FIONA GOODALLーPOOLーREUTERS (ARDERN), LEHTIKUVA LEHTIKUVAーREUTERS (MARIN), JANE BARLOWーPOOLーREUTERS (STURGEON)

<「辞めたのは弱いからではない」...燃え尽きた時には誰もが「辞めたい」と言える社会に成長するために、3人の女性首相が教えてくれたこととは>

政治家が自ら職を辞すのは、たいてい何らかの「へま」をやらかしたときだ。へまの度合いは、その国の文化によって異なる。

些細なこと(公務用のクレジットカードでスナック菓子を買ったスウェーデンのモナ・サーリン議員)もあれば、とんでもない話(側近の痴漢行為を知りつつ隠していたイギリスのボリス・ジョンソン首相)もある。

しかし今年に入って辞意を表明した3人の首相の場合、その理由はもっと真摯で率直なものだった。

最初は1月、2017年からニュージーランドの首相を務めていたジャシンダ・アーダーン。次いで2月には、スコットランド自治政府の首相を8年以上務めたニコラ・スタージョン。そして4月初めには、フィンランド首相のサンナ・マリンが総選挙に敗れて辞意を表明した。敗れたとはいえ個人としての人気はまだ高いのに、与党・社会民主党の党首の座も退くという。

よほどの失言でもない限り、政治家が自ら身を引く本当の理由を知るのは難しい。だが3人は驚くほど率直に、辞める理由を語っている。

「私はこの仕事の過酷さを知っているし、自分にはもうこの役目を十分に果たすだけのエネルギーがないことも知っている」と言ったのはアーダーン。一方、マリンは「私の持久力の限界が試された。(首相になってからの日々は)おそろしく困難だった」と打ち明けた。

そしてスタージョンも、首相の職に全身全霊をささげるのはもはや限界だと気付いたと語った。「この仕事が私に及ぼす身体的・精神的な打撃に、私はここへ来てようやく気付き、受け入れました」

政治家と人間の両立?

要するに「燃え尽きた」ということだが、職を辞す政治家がこうも率直に、それを口にしたのはたぶん前代未聞。ああ、そうした私的なことを誰もが口にできる時代が来たのか、と思いたいところだ。

でも違う。この3人が注目されたのは、働きすぎはいけないと誰もが気付き始めたからじゃない。3人とも女性だったからだ。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    ハン・ガンのノーベル文学賞受賞はなぜ革新的なのか?…

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプショック

特集:トランプショック

2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?