「ノーと言われても、くじけたらダメ」──アメリカの「女性起業ブーム」の背景とは?
The Changing Face of Entrepreneurship
自分のファッションブランドを巧みに宣伝する歌手のリアーナ KIRBY LEEーUSA TODAY SPORTSーREUTERS
<女性起業家による新興企業の利回りは2倍以上にもかかわらず、全体の2%と資金調達面に苦労している。それでも自らのアイデアを形にして、自分に賭ける人々の挑戦について>
2月に行われたアメリカンフットボールの王者決定戦、スーパーボウルのハーフタイムショーでのこと。
歌手のリアーナは曲の合間に、自らのファッションブランド「フェンティ」のパウダーで化粧直しをするというパフォーマンスを行った。
唇を彩る華やかな口紅もバックダンサーたちの衣装もフェンティの製品。そのかいあってか、メディアマーケティング戦略の金銭的価値を分析しているロンチメトリクスによれば、試合からたった半日でフェンティは780万ドルを売り上げた。
リアーナが見せたような商才が起業家には欠かせない。だがアメリカで近年、増えている起業家たちとリアーナの共通点はそれだけではない。
パンデミックが始まって以降のアメリカでは女性、特に有色人種の女性が、活発な起業活動の牽引役となっている。
人事管理ソフトウエア会社のガストによれば、2019年に新規に起業した人のうち女性が占める割合は29%だったが、20年以降はぐっと増えて50%弱で推移している。また、20年に起業した女性経営者のうち47%は有色人種が占めた。
コロナ禍を背景に、女性の労働率は1988年以降で最低の水準まで落ち込んだ。これは人員整理が最も激しく行われたのが女性が多く働く業界だったことや、学校や保育園が休みになり、家で子供の世話をすることを余儀なくされた女性たちが仕事を辞めたことが原因だ。
多くの女性にとって起業は、キャリアを切り開き、必要な収入を得つつ、ロックダウン下で家族の世話をするための柔軟な働き方の実現に向けた最善の選択肢だったのだ。
事実、ガストの調査では、20年にビジネスを立ち上げた女性の4割近くが起業はコロナ禍の直接の結果だったと答えている。なかでもマイノリティーの女性たちは、解雇や金銭的な問題から起業したと答える人が多かった。