「あなたは私の人生を変えた」──あえて空気を読まない勇気で番組に乗り込んで
Not the Black Sidekick
法律事務所や教室やミスコンでもただ1人の黒人女性であったことでお約束を破ってきたウィリアムズ DIMITRIOS KAMBOURIS/GETTY IMAGES FOR ALICE + OLIVIA
<『リアル・ハウスワイフinニューヨーク』の初の黒人キャストに起用された、エボニー・K・ウィリアムズ。酷評の嵐にさらされても、リアリティー番組のお約束を破り続ける理由とは?>
私は悪名高いリアリティー番組『リアル・ハウスワイフinニューヨーク(略称「RHONY」)』のシーズン13でこの手の番組にデビューした。RHONYに黒人のハウスワイフ(主婦)が登場するのはそれが初めてだった。
もともとの自分のキャリアプランではRHONYに出るなんて考えたこともなかった。なにしろ金持ちで見た目がいいから無知でも許される女たちが酔っぱらって悪ふざけをし、つまらないことでギャーギャーわめくような番組だ。
それでもこの番組が黒人女性を募集していると聞いて、自分がその場にいれば会話の流れを変えられるかもしれないと思った。出演者の選考が始まった時点では私には婚約者がいたから「働く主婦」という設定でもいけるはずだったが、出演が決まる前に彼とは別れてしまった。
だがケーブル局Bravoの制作陣は「問題なし」と判断。数カ月の選考期間を経て、2020年秋に出演が決まったと電話があった。
電話を切ったときには興奮気味だった。出ることに迷いがあったのに、そんなものはどこかに吹っ飛んでいた。
ちょうどこの時期、大きな変化が起きていた。それはパンデミックの最初の年であり、しかもその夏、黒人男性ジョージ・フロイドが白人警官に殺された事件で世界中に未曽有の抗議のうねりが広がった。
フロイド殺害とその後の人々の怒りは私に深い影響を与えた。撮影が始まったら、黒人コミュニティーのために、そして自分のためにも何かできることがあるはず。それは何だろう......。
答えはすぐに分かった。大事なことは、フロイド殺害事件を受けてアメリカ中の人々が人種について語り合い、今後も議論を続けていくこと。そうなるよう声を上げていく運動に自分も参加したい。
酷評の嵐にさらされる
でも、その前に乗り越えるべき壁があった。20年10月に番組初の黒人キャストとして私の出演が発表されると、黒人の起用を歓迎する声もあったが、私は批判の対象にもなった。「彼女は黒人? そうは見えないけど」そんな書き込みがネット上にあふれた。