受験一筋だと「答えのない問題」で挫折する──「伸び続ける子」に育てるコツ
どうしたら自分で考え、行動する子に育つのか?
では、子どもが自分で考え、決断し、行動する習慣を身につけるにはどうすればよいのでしょうか?
この習慣を身に着けている子どもの「親に」共通しているのが、「子どもの自主性を尊重すること」です。
自主性を尊重するとはどういうことかというと、「あれをしなさい」「これをしなさい」といった命令や指示をしないこと。子ども自身の選択を大切にし、親が具体的な行動を強要することがないのです。もちろん、「勉強しなさい」「宿題しなさい」とも言いません。
一方で、子どもの好きなこと、興味のあること、やりたいことには惜しみない協力をし、学びの場を積極的に用意しているのです。
アイビーリーグの名門、ペンシルバニア大学ウォートンスクールを首席で卒業したアデル君(仮名)は、こう言います。
「両親は私が何をするにも私の意志を尊重してくれました。私が『何をすべきなのか』を示してくれましたが、『どうすべきなのか』は私に任されていました。たとえば家族のルールとして『スポーツをすること』がありましたが、どのスポーツをするのかは私が選ぶことができました。私の選択について両親が反対したり、うまくいかなかった時に叱ることはなかったです。おかげで私はあるがままの自分に自信を持つことができました。また両親は『学問はどんな道を目指す上でも絶対に必要なものである』と、勉強の大切さについて教えてくれましたが、『勉強しなさい』と私に言ったことはありませんでした。勉強をいつ、どこで、どれだけやるかは全て私に任されていました。でも放任していたわけではなく、勉強でわからないことがあればいつも両親が助けてくれました」
このアデル君のケースのように、何ごとにも打ち込む子が育つ家庭では、親が子どもに「大枠の方針」や「人生の哲学」を伝えはしますが、「では具体的にどうするか」は子ども自身に選ばせます。そして、子どもがつまずいた時や大変な時には手を差し伸べ、寄り添い、一緒に解決していくのです。
自主性を尊重することと、好き放題させることの違い
では、自主性を尊重するために「何でも子どもの言うとおりにすればいい」「放任すればいい」のかといえば、そうではありません。たとえばゲームが好きだから何時間でもゲームをさせていいかといえば、そうではないのです。
子育て上手な親は、子どものそうした興味を「強み」に発展させて、よりレベルの高いものに変換していきます。ゲームを何時間でもできるならば、その「集中力」や「手先の器用さ」にフォーカスして、より集中力を高めるための習い事をすすめる。たとえば、プログラミングを学ばせて「ゲームで遊ぶ」から「ゲームを作る」という体験をさせる、といった具合です。
しかしその際も、親が「これをしなさい」と強制しません。子どもが自分の意志でその道を選択していると思えるように親が「仕掛け」をつくるのです。「この子はプログラミングに向いているかもしれない」そう親が判断したならば、まず子どもの「強み」を言葉で伝えてあげます。「すごい集中力だね」「手先が器用なのは才能よ」という要領です。
そして、いきなりプログラミング教室に放り込むのではなく、家庭で技能を周囲よりも少しだけ高めてあげるのです。パソコンであればタイピングや基本ソフトの使い方を教えてあげた上で「プログラミング習ってみる?」と子どもに促します。すると子どもは「やってみる」と自分の意志でプログラミングに向き合うようになるのです。
子どもの「強み」を言葉で伝えて、その部分が伸びるように親がサポートをして、最終的に子ども自身が選ぶことによって、子どもの自主性が育っていきます。子ども自身が選択したことが(親のサポートもあって)うまくいく。この成功体験の積み重ねが「何事にも本気で打ち込む子」に育てるコツです。ぜひ実践してみてください。
[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。