入試不正やコネ工作も厭わない毒親「芝刈り機ペアレント」、最大の被害者は子どもです
芝刈り機とヘリコプターの違いと類似点
芝刈り機ペアレントに加えて、アメリカで問題視されているのが「ヘリコプターペアレント」です。ヘリコプターペアレントは、子どもの周辺をヘリコプターのようにホバリングし、行動を管理(監視)する親です。勉強はもちろん、習い事から友だち関係まで、子どもの生活を細かく管理します。
ヘリコプターペアレントも芝刈り機ペアレントも「過干渉の親」なのですが、ごく大雑把に分類すれば、ヘリコプターは「口を出し」をし、芝刈り機は「手を出し」するという特徴があります。
たとえば、ヘリコプターペアレントは、子どもの宿題や提出物を毎日チェックしてミスがないように注意を促します。一方で芝刈り機ペアレントは、子どもの成績を上げるために宿題やプロジェクトを「親が」やってしまうのです。
芝刈り機もヘリコプターも「自分の子育てに問題がない」と思っている点で共通しています。子どもに深く関わっていることを誇りに感じ、自分たちの行動は子どもの人生を成功に導くための手段、親として当然の行為と考えているのです。
しかし親が子どもの行動に干渉し過ぎると、子どもは次第に息苦しさを感じるようになり、自発的な「やる気」を失っていきます。また何ごとにも人を頼る傾向が強くなり、自立を妨げてしまうケースが多いのです。
メアリーワシントン大学の研究では、過干渉の親元で育った子どもは自信を失いやすく、生活に不満を抱き、イライラしがちになることが分かっています。同研究は「過干渉は子どもの能力や独立心の発展を妨げるだけでなく、子供の幸福感を奪い、大人になってからプレッシャーにうまく対応する力を失わせる」と結論づけています。
経済格差が広がると過干渉の親が増える
イェール大学のファブリツィオ・ジリボッティ(Fabrizio Zilibotti)教授とノースウェスターン大学のマティアス・ドゥプケ(Matthias Doepke)教授は、共著「子育ての経済学」の中で、アメリカで過干渉の親が増えている背景に「経済格差の拡大」があることを指摘しています。
最終学歴が所得に直結するアメリカのような学歴社会では、受験競争が加熱し、親が子どもに干渉する比重が高くなる。一方でスウェーデンのように経済的不平等が少ない国では、受験が加熱することはなく、過干渉の親も少ない。
確かに経済格差が大きい社会ほど受験が激化する傾向があります。たとえば韓国は世界一過酷な受験戦争で知られていますが、貧富の差が激しい社会でもあります。OECDが公表している国別貧困率データでは、韓国は調査対象40カ国中7番目に貧困率が高い水準となっています。(アメリカは3番目)
韓国の教育ママは子どもを勝ち組(エリート)にするために必死です。幼児期から学習塾、数学専門塾、英会話塾に通わせ、さらにテコンドーやバイオリンなどを習わせます。大学受験に失敗すれば「負け組決定」という韓国では、親が子どもの教育に深く関与するのは「当たり前」であり、もれなくヘリコプターペアレントなのです。
子どもに質の高い教育を与えるにはお金がかかります。韓国の富裕層は小学生の子どもを英語圏に留学させるなど、莫大な教育費をかけてエリート教育を施しています。その結果、子どもたちの平均学力が上がり、さらに格差が広がるという悪循環に陥っているのです。経済格差の拡大と「過干渉」は確かにつながっています。