最新記事

音楽

難病「結節性硬化症」に苦しむ女性を救ったピアノ...万雷の拍手を呼ぶまでの物語

“I Have a Rare Disease”

2022年01月20日(木)17時21分
エミリー・ファン(ピアニスト)
エミリー・ファン

数々のコンクールで優勝し、カーネギーホールでも2回演奏したファン COURTESY OF EMILY PHAN

<発達の遅れで歩くことも話すこともままならなかったが、練習を重ねてハンディを克服しプロの道に踏み出した>

両親の話では、私が初めててんかんの大発作を起こしたのは生後6カ月のとき。その後、突然頭をカクンと垂らすなど奇妙な動きをする「点頭てんかん」(IS)の発作を繰り返すようになった。

両親は私を病院に連れて行ったが、MRI検査の結果は異常なし。だが医師の1人が発作の原因に気付いて両親に電話で知らせてくれた。病名は結節性硬化症(TSC)。体のあちこちに腫瘍ができ、さまざまな不具合が出る希少な遺伝性疾患だ。

幸運にも大学病院の臨床試験に参加できたおかげで、てんかんの発作は完治した。でもTSCによる発達の遅れでお座りもハイハイもできず、言葉もなかなか話せなかった。

言語、作業、理学療法を受けたが、大した改善はなし。そこで母が言いだした。ピアノを習わせたらどうかしら。

母が雇った5人の先生に一対一でピアノを習い始めたのは4歳のときだ。教え方も着眼点も違う先生方に教われば最大限の効果があるはず。母はそう期待した。

確かにピアノの練習では全身の筋肉を使うので、少しずつだが運動能力は向上した。とはいえ、5歳でようやく2歳児並みの発達レベル。手足の力が弱いため、カーディガンのボタンも自分ではめられず、恥ずかしい思いをした。

高校時代には全米大会にも出場

それでも7歳までには立った姿勢でシリアルの入ったボウルを2秒ほど支えられるようになった。すぐに落としてしまったけれど、その瞬間はとても誇らしかった。

10歳頃にはコンクールに出場するほどピアノも上達した。地域の小さなコンクールから始めて、高校生になると全米大会に出るようになった。

2016年、20歳のときにカリフォルニア州マリブにあるペッパーダイン大学に入学した。教授陣は私の中に眠っている可能性に気付いて引き出してくれた。私は好きなことには並外れた集中力を発揮するタイプで、大学に入学した翌年から1日10~14時間、ピアノの練習するようになった。この時期には発達の遅れも急速に取り戻し、23歳になる頃には同年代の人たちと変わらないレベルになった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、財務長官に投資家ベッセント氏指名 減税

ワールド

トランプ氏、CDC長官に医師のデーブ・ウェルドン元

ワールド

トランプ次期大統領、予算局長にボート氏 プロジェク

ワールド

トランプ氏、労働長官にチャベスデレマー下院議員を指
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 5

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 4

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること