エリザベス女王の憂鬱、「健康不安説」「不人気な息子」「もっと不人気な孫」
GOD SAVE THE QUEEN
そもそもヘンリーとチャールズの関係は緊張をはらんでいたが、ヘンリーが離婚歴のあるアメリカ人女優と結婚したことで、タブロイド紙のセンセーショナルなリーク合戦が勃発。ついに21年3月、アメリカに渡ったヘンリー夫妻が人気司会者オプラ・ウィンフリーのインタビューで「真実」を暴露するに至った。
この中でヘンリーは、妻を助けてほしいという懇願を父の家族が無視したと非難した。メーガンも、ウィリアムの妻であるキャサリン妃を泣かせたという「定説」に反して、キャサリンのほうが自分を泣かせたのだと示唆した。インタビューは世界の約5000万人に視聴された。
これまで数え切れないほど家族のスキャンダルに直面してきた女王(ネットフリックスのドラマ『ザ・クラウン』にたっぷり描かれている)は、まさにこうした出来事に対処する準備ができていた。
ヘンリー夫妻のインタビュー放送から36時間、女王はノーコメントを貫いた。ついにその沈黙を破ったときには、慎重に言葉を選び抜いた声明を発表した。すなわちヘンリーとメーガンに思いやりを示しつつ、「記憶というものは(人によって)異なるかもしれない」として、夫妻の主張に異論があることを示唆したのだ。それは、孫夫妻との公然たるケンカに巻き込まれまいという強い意思を、国民に示すことにもなった。
新たな「親子戦争」が勃発する日
ダイアナやチャールズなど王室メンバーについて複数の伝記を書いたジャーナリストのペニー・ジュノーは、女王は「非常に長期的な視点の持ち主だ」と語る。「若者は突然、不公平感に目覚めて激高することがある。オプラのインタビューのように、誰かの発言や世論の流れにすぐに反応して、それを正したいと思いがちだ」
「女王は違うと思う。これまでさまざまな問題が起こっては、それが過去のものになり、最終的に物事が丸く収まるのを見てきた。こういうときは、関わり合いにならずに嵐が収まるのをじっと待つほうがいいことも多い。それに(女王が)関われば、ますます騒ぎが大きくなる」
よほどの大惨事がない限り、ヘンリーが英国王になることはない。彼の王位継承順位は、チャールズとウィリアム、そしてウィリアムの3人の子供たちに次ぐ6位だ。つまりイギリスの大衆が、大嫌いなサセックス公爵夫妻の昇格を見ることもない。
これに対して、チャールズが国王、ウィリアムが皇太子になる日はほぼ確実に来る。ただし、それはさらなる騒動をもたらす可能性があると、ジュノーは指摘する。