エリザベス女王の憂鬱、「健康不安説」「不人気な息子」「もっと不人気な孫」
GOD SAVE THE QUEEN
「彼は悪い国王になると思う」
英調査会社イプソスモリによると、91年、チャールズが「良い国王になると思う」と答えたイギリス人は82%もいた。
ところがそのすぐ後に、カミラ・パーカー・ボウルズ(現在はチャールズと結婚してコーンウォール公爵夫人)とのダブル不倫が明らかになり、ダイアナが涙ながらにチャールズの冷淡な態度を暴露し、離婚が成立すると、チャールズの人気は半減し、そのまま下がり続けている。21年5月のユーガブの調査では、チャールズが「良い国王になると思う」と答えた人はわずか31%で、むしろ「悪い国王になると思う」と答えた人は35%に上った。
とはいえ、こうした数字が何かを変えるわけではない。それに歴代の英国王にはとんでもない暴君が大勢いて、当時世論調査があれば、はるかにひどい人気だっただろう。
英王室の一部は、女王が死去した場合に備えた計画「ロンドン橋作戦」とチャールズの戴冠計画「春の潮作戦」という最高機密をリークした。万一のことがあっても英王室は変わらないと印象付けるためだ(これらは9月にニュースサイトのポリティコ欧州版によって報じられた)。
21年は、チャールズにとっていい年になるはずだった。30年以上前から環境保護を訴え、草花の話ばかりする変人と笑われてきたが、21年はグラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催される。イギリスが世界的な地球温暖化対策を取りまとめ、チャールズは先見の明のある王族として敬意を集めるはずだった。
だが、父フィリップの死や、弟アンドルー王子の未成年の少女に対する性的虐待疑惑、そして次男ヘンリー王子と妻メーガン妃(サセックス公爵夫妻)が20年、王室の「高位メンバーの責務」からの引退表明をしたことの余波を受け、チャールズの功績は影が薄くなってしまった。
ダイアナが生きていれば60歳を迎えた21年7月1日、サセックス公爵夫妻のファンアカウントは、「ダイアナの誕生日に、ヘンリー王子とウィリアム王子が母親の像を見上げる美しい光景」とする写真をツイートした。だがそこに写っていたのは、王子としての責任を果たしつつも、お互いからできるだけ距離を置こうとする兄弟の姿だった。
ダイアナの伝記を本人の協力を得て書いたアンドルー・モートンは、「みんなメーガンとヘンリーにばかり注目するが、見る場所が間違っている」と語る。「本当に目を向けるべきなのはチャールズだ。その前途には大きな困難が待ち受けている。近い将来、国王であり国家元首になる人物の支持率が30~40%しかないのだから」
「危険な事態だと思う」と、モートンは言う。「ヘンリーとメーガンは王室にとどまっていても、付随的なメンバーにすぎなかった」