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慈善活動

自分にできることは何か...冨永愛は発信力を武器に「途上国の母子」を守る

2021年12月14日(火)12時36分
大橋 希(本誌記者)

今年2月の国軍によるクーデターも重なり、ミャンマーが再び候補地となるかは見通せないが、彼女にとって支援先の訪問は「コロナ禍が収束したら真っ先にやりたいこと」だ。

自身の活動が実を結んでいると実感するのは? 「やはり具体的な数字を見たときですね。私がアンバサダーに就いた頃は世界で1日当たり約950人の妊産婦が亡くなっていた。それが今は800人強に減っている。もちろん私だけの力ではないけれど、少しずつでも結果が出ていることがうれしい」

ジョイセフ・デザイン戦略室の小野美智代は、冨永の存在が支援活動への関心に確実に結び付いていると話す。「ここ3~4年は特に、彼女をきっかけにジョイセフを知ったという20代、30代の若い人が増えている。彼女がインスタグラムにジョイセフの活動を上げると、サイトのアクセス数やフォロワー数がぐっと伸びる」

その発信力が注目される冨永は、19年に消費者庁のエシカルライフスタイルSDGsアンバサダー、そして今年は伊藤忠商事の「ITOCHU SDGs STUDIO」のエバンジェリスト(伝道師)にも就任。世界共通の目標で、今の時代のキーワードである「持続可能な開発目標(SDGs)」の広報役を担っている。

こうした活動が「冨永さんの中で多角的につながっている」とも小野は言う。「彼女は当初、自身が日本で出産し一児の母になった経験から、日本であれば助かるはずの命を守りたい、出産時に亡くなる女性をなくしたいという思いが強かった。でもそこを出発点に熱心に勉強し、今では、SDGsやジェンダー問題の解決策をファッションの切り口で探るなど、多様な視点を持つようになっている」

冨永がみんなに知ってほしいのは、「世界は大きいように見えて小さい」ということだ。「人間が環境に及ぼす影響は目に見えて分かる。つまり人間が地球を変えることができてしまっている。そう考えると地球って小さいし、アマゾンの森林が減少していることやアフリカで子供が飢餓で亡くなっていること、いまだにどこかで戦争が続いていることが、身近な問題だと感じられると思う」

世界と日本、支援する人と支援が必要な人、さまざまな人をつなぐ橋のような存在の彼女を、これからも多くの人が頼りにしていくに違いない。

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