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自分にできることは何か...冨永愛は発信力を武器に「途上国の母子」を守る

2021年12月14日(火)12時36分
大橋 希(本誌記者)
冨永愛

2012年のタンザニア訪問時、家族計画の重要性を理解してもらうセッションで COURTESY JOICFP

<NGOジョイセフの「広報リーダー」として、冨永愛は「発信力」という自らの強みを生かして社会を活動に巻き込むことに成功している>

自宅の土間に布を敷いただけの場所で、使える道具はさびついたハサミとバケツくらい。せっけんも消毒液もなく、助産師はおらず、赤ちゃんを取り上げるのは妊婦の母親。そんな状況が当たり前で、感染症や産後の疾患で亡くなる人も多い──。

冨永愛(39)は2010年11月、NGOのジョイセフが支援活動を行うザンビア・コッパーベルト州を訪れ、妊産婦たちの現実を目の当たりにしたときのことを振り返る。

「自分が経験した出産と現地の環境があまりに違って心が痛かったし、見たもの全てが目に焼き付いている。女性は子供たちに別れを告げて出産に臨むんです。生きて戻れるか分からないから。ほかにも13歳、14歳という若年での妊娠やレイプの問題、性教育をどうするかといった課題もある。自分にできることがあれば......と真剣に考えた」

トップモデルとして世界のランウェイを歩き、現在はテレビ、ラジオなど活躍の舞台を広げている冨永が近年、積極的に取り組んでいるのが、社会貢献活動だ。その原点と言えるのが、ジョイセフの主催するイベント「MODE for Charity」の親善大使としてのザンビア訪問だった。

ジョイセフは、戦後日本の母子保健・家族計画のノウハウを途上国で生かすために生まれた老舗NGO。これまでにアジア、アフリカ、中南米の39カ国で、性と生殖や女性の健康にフォーカスしたプロジェクトを実施しており、01年には国連人口賞(人口問題の解決に貢献した個人や団体に授与)を受賞した。

「現地の人々で続けていけるように」

彼らの活動に共感した冨永は11年に「アンバサダー」に就任し、いわば広報リーダーとして情報発信を続けている。ザンビアに続き、12年にはタンザニア・シニャンガ州のプロジェクトを視察。帰国後は関係者向け報告会やメディアで、支援の現状を伝えた。

「ジョイセフは施設を建設するだけでなく、何年もかけて現地のスタッフとやりとりしながら村々に必要なシステムをつくっていく。最初は私たちが手助けしても、あとは現地の人々で続けていけるように、例えば妊婦健診や家族計画、性教育の必要性を理解してもらい、根付かせる。草の根のサステナブルな活動です」と、冨永は言う。

昨年8月にはミャンマー行きを予定していたが、コロナ禍でやむなく中止になってしまった。ジョイセフは日本の制度を基に、妊婦や母親、乳幼児の健康を支えるボランティア「母子保健推進員」をミャンマーで育成しており、その数は今や5000人以上。冨永は彼らの活動を視察するはずだった。

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