「親ガチャ」は子どもからの警告 原因は育児力格差
写真はイメージ monzenmachi-iStock
<日本の若者に「親ガチャ」が広がった理由は、「お金がないから無理」「貧乏だからよい教育ができない」「自分たちに才能がないから子どもも才能がない」「地方在住で教育機会が少ないから不利」というネガティブなバイアスを「親が」子どもに刷り込んでいるからではないでしょうか>
「人生は、生まれた環境(親)によって決まる」
これをガチャガチャに例えた「親ガチャ」という言葉を見聞きするようになりました。「親ガチャ」というキーワードが日本の若者に違和感なく浸透した理由として「家庭の経済格差」が広がっていることが指摘されています。
私は日本、アメリカ、中国で教育に関わり、多様な家庭の親子を見てきましたが、親の経済力による「教育格差」は間違いなく存在します。経済的に豊かであれば、子どもによりよい教育環境を与えられる......というのは、決して嘘ではありません。しかし豊かな家庭に生まれた子どもが全員「親ガチャ当たり!」かと言えば、当然、そんなことはありません。
裕福な家庭、親が高学歴の家庭ほど、子どもへの期待やプレッシャーも強くなり、その結果、つぶれてしまう子どもが世界にはごまんといるのです。「親ガチャ」の根底にある問題は、親の経済力格差よりも「親の育児力格差」ではないかと私は考えています。
親の期待でつぶされる韓国の子どもたち
1997年の通貨危機後にグローバル化が進んだ韓国では「海外留学ブーム」が起きました。裕福層を中心に子どもを英語圏へ留学させることがトレンドとなり、ピークの2006年には、全学齢期の子どもの38%が留学経験者という大変大きな数字となりました。
親が競い合って子どもに英語教育を強制した結果、アメリカのトップ大学へ進学する韓国人学生が急増しました。2013年のハーバード大学(大学院含む)の国別在籍者数を見ると韓国人は293名で、中国(722名)、カナダ(568名)に次ぐ第3位となっています。(同年の日本人在籍者数は88名)
ところが、ここに思わぬ落とし穴がありました。アメリカのトップ大学に通う韓国人学生のうち44%がドロップアウト(途中退学)してしまったのです。
物心ついた時から脇目もふらず、青春のすべてを勉強にかけてアメリカの名門大学合格を勝ち取ったのに、なぜ半数近くの学生が志半ばで途中退学することになってしまったのでしょうか?