「親ガチャ」は子どもからの警告 原因は育児力格差
親に言われるまま英語学習に励み、親の期待に答えるために留学し、親が希望する世界のトップ大学に合格したことで目標を失い、さらなる学習への意欲を失ってしてしまったのです。いわゆる「燃え尽き症候群」と呼ばれる現象です。
世界中から優秀な人材が集まるアメリカのトップ大学は、入学するのも難しいですが、それ以上に卒業するのが大変です。合格後にさらに激化する世界のエリートたちとの競争に心が折れ、勉強へのモチベーションが湧かず、「自分はアメリカではやっていけない」と自信喪失してしまったのです。
裕福な家庭の子どもは質の高い教育を受けることができますが、同時にハイレベルの競争に巻き込まれます。親が「教育」に気を取られて、子どもの「心育て」を置き去りにしてしまうと、いつか経験する挫折に耐えられないのです。
たくましい心を育てることに目を向ける
現代社会を生き抜く子どもに求められるのは「たくましい心」です。勉強ができること、良い学校に合格することも重要ですが、人生の成功を決定づけるのは精神的なたくましさです。
「たくましい心」を育てるにはお金は必要ありません。また親の学歴も、職業も、住んでいる場所も関係ありません。必要なのは「親の関わり方」だけです。子どもの「自主的なやる気」を伸ばして「自信」を大きくすればいいのです。
自信が大きければ少々の挫折に負けることはありません。「自分はできる」と信じている子は、困難に立ち向かい、新しいことにチャレンジする勇気を兼ね備えています。失敗に屈せず、努力を重ねれば、どんな道を選ぼうとも、子どもが成功する確率は飛躍的に高まるのです。
つまり親の育て方次第で、どんな子どもも成功者になれますし、どれだけ才能がある子どもでも、親が育て方を間違えれば自己肯定感が低く、やる気の小さい子どもにも育ってしまうのです。
「親ガチャ」は努力したくない子どもの言い訳ではありません。子どもの人生をコントロールしようとする親、「心育て」をおろそかにする親が(世界中で)増えていることに対する、子どもからの警告であると私は捉えています。
親が最初から「この程度だ」「人並みでいい」、あるいは、「一流校に合格しなければならない」「一流企業に就職しなければならない」という前提で子育てをしていれば、子どもの「やる気」も「自信」も育つはずなどないのです。
日本の若者に「親ガチャ」が広がった理由も、「お金がないから無理」「貧乏だからよい教育ができない」「自分たちに才能がないから子どもも才能がない」「地方在住で教育機会が少ないから不利」というネガティブなバイアスを「親が」子どもに刷り込んでいるからではないでしょうか。
子どもの意思を尊重し、子どもに選択させる
親の理想の押しつけやネガティブバイアスの刷り込みなど、子ども不在の教育を続けていると「自主的なやる気」が育ちません。たくましさの源泉は、子どもが「自分の意思で」ものごとに取り組んだ時に「自分の力でできた!」という成功体験にもとづいて生まれるものです。
つまり「あれをしなさい」「これをしなさい」「勉強しなさい」「宿題やりなさい」といった命令や指示を減らし、子ども自身の選択を尊重し、親が具体的な行動を強要しなければいいのです。
このようにお伝えすると「子どもが勉強をせずにゲームばかりしている!それでも放っておくのか!」という声が聞こえてきます。そのような時は「いつ宿題するのか教えてくれる」「ゲームを何時までやるのか決めてくれる」と、子ども自身に選択させてください。