最新記事

教育

「親ガチャ」は子どもからの警告 原因は育児力格差

2021年11月04日(木)16時45分
船津徹

親に言われるまま英語学習に励み、親の期待に答えるために留学し、親が希望する世界のトップ大学に合格したことで目標を失い、さらなる学習への意欲を失ってしてしまったのです。いわゆる「燃え尽き症候群」と呼ばれる現象です。

世界中から優秀な人材が集まるアメリカのトップ大学は、入学するのも難しいですが、それ以上に卒業するのが大変です。合格後にさらに激化する世界のエリートたちとの競争に心が折れ、勉強へのモチベーションが湧かず、「自分はアメリカではやっていけない」と自信喪失してしまったのです。

裕福な家庭の子どもは質の高い教育を受けることができますが、同時にハイレベルの競争に巻き込まれます。親が「教育」に気を取られて、子どもの「心育て」を置き去りにしてしまうと、いつか経験する挫折に耐えられないのです。

たくましい心を育てることに目を向ける

現代社会を生き抜く子どもに求められるのは「たくましい心」です。勉強ができること、良い学校に合格することも重要ですが、人生の成功を決定づけるのは精神的なたくましさです。

「たくましい心」を育てるにはお金は必要ありません。また親の学歴も、職業も、住んでいる場所も関係ありません。必要なのは「親の関わり方」だけです。子どもの「自主的なやる気」を伸ばして「自信」を大きくすればいいのです。

自信が大きければ少々の挫折に負けることはありません。「自分はできる」と信じている子は、困難に立ち向かい、新しいことにチャレンジする勇気を兼ね備えています。失敗に屈せず、努力を重ねれば、どんな道を選ぼうとも、子どもが成功する確率は飛躍的に高まるのです。

つまり親の育て方次第で、どんな子どもも成功者になれますし、どれだけ才能がある子どもでも、親が育て方を間違えれば自己肯定感が低く、やる気の小さい子どもにも育ってしまうのです。

「親ガチャ」は努力したくない子どもの言い訳ではありません。子どもの人生をコントロールしようとする親、「心育て」をおろそかにする親が(世界中で)増えていることに対する、子どもからの警告であると私は捉えています。

親が最初から「この程度だ」「人並みでいい」、あるいは、「一流校に合格しなければならない」「一流企業に就職しなければならない」という前提で子育てをしていれば、子どもの「やる気」も「自信」も育つはずなどないのです。

日本の若者に「親ガチャ」が広がった理由も、「お金がないから無理」「貧乏だからよい教育ができない」「自分たちに才能がないから子どもも才能がない」「地方在住で教育機会が少ないから不利」というネガティブなバイアスを「親が」子どもに刷り込んでいるからではないでしょうか。

子どもの意思を尊重し、子どもに選択させる

親の理想の押しつけやネガティブバイアスの刷り込みなど、子ども不在の教育を続けていると「自主的なやる気」が育ちません。たくましさの源泉は、子どもが「自分の意思で」ものごとに取り組んだ時に「自分の力でできた!」という成功体験にもとづいて生まれるものです。

つまり「あれをしなさい」「これをしなさい」「勉強しなさい」「宿題やりなさい」といった命令や指示を減らし、子ども自身の選択を尊重し、親が具体的な行動を強要しなければいいのです。

このようにお伝えすると「子どもが勉強をせずにゲームばかりしている!それでも放っておくのか!」という声が聞こえてきます。そのような時は「いつ宿題するのか教えてくれる」「ゲームを何時までやるのか決めてくれる」と、子ども自身に選択させてください。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    「男性に守られるだけのヒロイン像」は絶滅?...韓ド…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「ショート丈」流行ファッションが腰痛の原因に...医…

  • 1

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 2

    タンポンに有害物質が含まれている...鉛やヒ素を研究…

  • 3

    「ショート丈」流行ファッションが腰痛の原因に...医…

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン皇太子一家の「グリーティングカード流出」…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 4

    キャサリン妃の「結婚前からの大変身」が話題に...「…

  • 5

    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプ新政権ガイド

特集:トランプ新政権ガイド

2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?