ランゲージアーツの視点が足りない日本で「言葉を用いて伝える力」を育てるために
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<日本の国語の授業では、自分の考えを「言葉を用いて伝える方法」を教わることはほとんどありません。頭の中に漠然と存在する思考を言語化し、論理的に組み立て、相手が理解できるように言葉で表現するために、「話す」や「発表する」を包括したランゲージアーツの学習形態からヒントを探りましょう>
アメリカの子どもたちは小学校に上がるとランゲージアーツ(Language Arts)と呼ばれる授業を受けます。ランゲージアーツは日本の「国語」に該当する教科なのですが、なぜか「English/英語」とは呼ばないのです。
「Art」は日本語で「芸術」と訳されることが多いですが、語源は「熟練した技」という意味です。つまりランゲージアーツは「言葉の技術」を育てるための教科です。子どもたちは「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能に加えて「見る」「発表する」の6領域について系統的に学習します。
日本の国語の授業では、「話す」や「発表する」など、自分の考えを「言葉を用いて伝える方法」を教わることはほとんどありません。そのため「話す力」や「表現する力」が十分に身につかず、人前で話したり、初対面の人と打ち解けることに苦手意識を持つ子どもが(大人も)が少なくありません。
どうしたら自分のメッセージをうまく伝えられるのか?その答えがランゲージアーツです。頭の中に漠然と存在する思考を言語化し、論理的に組み立て、相手が理解できるように言葉で表現する。この一連のプロセスを訓練するのがランゲージアーツの目的です。
多様性の高い社会では「言葉」が重要
アメリカは多文化、多人種、多言語が混在する多様性の高い社会です。異なる言葉や文化背景を持つ人たちがスムーズに意思疎通し、相互理解を深めるためには、相手に分かりやすく、かつ、嫌悪感を抱かせないように「上手に言葉で伝える技術」が要求されます。
英語がシンプルで直接的な表現を好むのは、自分の主義主張を押し通すためではなく「ミスコミュニケーションを減らすため」です。誰が、誰に、何を伝えたいのか、日頃から自分の考えを「明確な言葉に変換する」訓練をしておかないと、アメリカ社会では誤解を招き、トラブルを引き起こす原因となってしまいます。
アメリカの「言葉」を重視したコミュニケーションと対称的なのが、日本の「非言語」に比重を置くコミュニケーションスタイルです。日本では「以心伝心」や「空気を読む」など、相手に察しを期待したり、言葉を遠回しにしてあいまいにする表現が通用します。日本人にとっては当たり前ですが、国際社会では言葉を明確にしないと相手に正しく理解してもらえない場面が多くなります。
私はアメリカで学習塾を経営していますが、概して日本人の子どもは「言葉で伝える」ことが苦手です。現地校に通い始めた日本人の子どもが最初にぶつかる壁が、この日米の表現方法の違いに適応することです。
YES・NOをはっきり言う、自分の主張を明確にする、主張の根拠を説明するなど、アメリカの学校では常に自分の考えを「言葉で伝える」ことが求められます。これにうまく対応できないと「やる気がない」「理解できていない」「参加していない」など、先生からあらゆる悪い評価を受けてしまうのです。