最新記事

ランゲージアーツ

ランゲージアーツの視点が足りない日本で「言葉を用いて伝える力」を育てるために

2021年10月05日(火)12時40分
船津徹

親子の対話に「問い」を増やす

アメリカのランゲージアーツの授業では、生徒一人ひとりが自分の考えを明確な言葉に変換し、筋道を立てて分かりやすく伝え、議論や討論に参加することが要求されます。ところが日本人の子どもは、英語力に問題がなくても、発言をためらう傾向があるのです。

もちろん日本人の子どもであっても意見や自己主張を持っています。ただそれを「言葉で伝える」経験が足りないのです。私は米国流の個人主義を叩き込めと言っているのではありません。日本人的な、周囲に配慮した控えめな自己表現スタイルを維持しつつ、必要な場面ではしっかりと「言葉で伝える力」を持ち合わせることが重要という意味です。

子どもの「言葉で伝える力」を強化する簡単な方法が、親子の会話に「問い」を増やすことです。「どうしたらコロナウィルスから身を守れると思う?」と子どもに問いかければ、子どもは「手を洗う」「マスクをする」と答えます。これに対して「何で手を洗うと感染しないの?」「何でマスクをすると感染しないの?」と、さらに「問い」を重ねていくのです。

親が「問い」を増やすことで、子どもは自分の考えを言語化し、言葉を組み立て伝える練習を積むことができます。ただあまりしつこく問い詰めると子どもが逃げていきますので注意してください。子どもとの雑談の中でごく自然に「どうして?」「何で?」と質問するように意識してください。

国語力を高めると地頭が強くなる

よく「地頭が大切だ」という話を聞きますが、「地頭」とは何なのでしょうか?生まれつきの才能なのでしょうか?それとも後天的に身につける力でしょうか?

日米で教育に関わってきた私の経験から申し上げますと、地頭が良い子どもは新しい知識を早く身につけることができます。見聞きしたことを理解して、自分の中に落とし込む力が高く、さらに得た知識を再現したり、他のことに応用する力を持ち合わせています。

そう考えていくと「地頭が良い人」というのは「言葉の力が強い人」と言えるのではないでしょうか。常に言葉のアンテナを張り巡らせ、言葉をキャッチする能力が高ければ、周囲の人との対話や情報メディアを通して、新たな知識を獲得していくことができます。

また、地頭が良い人に共通する「問題解決能力の高さ」も言葉の力と関連しています。言葉(情報)を正しく理解し、言葉の本質を見極める力が備わっていれば、学校の勉強やテストでミスが少なくなることもちろん、日常生活のあらゆる場面において賢い判断ができるようになります。

ランゲージアーツは、言葉の力を強固にし、コミュニケーション力を高め、知的活動をサポートし、問題解決力を育成してくれます。何よりも言葉で伝える力が向上すると「よい人間関係」が構築できますから、子どもの生活が楽しく、豊かになるのです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

国連、雨季到来前に迅速な援助呼びかけ 死者3000

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米関税警戒で伸び悩みも

ビジネス

関税の影響を懸念、ハードデータなお堅調も=シカゴ連

ビジネス

マネタリーベース、3月は前年比3.1%減 7カ月連
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…

  • 5

    『リーン・イン』を期待された高学歴女性「ヒーブ」…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…

  • 3

    「日本のハイジ」を通しスイスという国が受容されて…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:引きこもるアメリカ

特集:引きこもるアメリカ

2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?