ランゲージアーツの視点が足りない日本で「言葉を用いて伝える力」を育てるために
親子の対話に「問い」を増やす
アメリカのランゲージアーツの授業では、生徒一人ひとりが自分の考えを明確な言葉に変換し、筋道を立てて分かりやすく伝え、議論や討論に参加することが要求されます。ところが日本人の子どもは、英語力に問題がなくても、発言をためらう傾向があるのです。
もちろん日本人の子どもであっても意見や自己主張を持っています。ただそれを「言葉で伝える」経験が足りないのです。私は米国流の個人主義を叩き込めと言っているのではありません。日本人的な、周囲に配慮した控えめな自己表現スタイルを維持しつつ、必要な場面ではしっかりと「言葉で伝える力」を持ち合わせることが重要という意味です。
子どもの「言葉で伝える力」を強化する簡単な方法が、親子の会話に「問い」を増やすことです。「どうしたらコロナウィルスから身を守れると思う?」と子どもに問いかければ、子どもは「手を洗う」「マスクをする」と答えます。これに対して「何で手を洗うと感染しないの?」「何でマスクをすると感染しないの?」と、さらに「問い」を重ねていくのです。
親が「問い」を増やすことで、子どもは自分の考えを言語化し、言葉を組み立て伝える練習を積むことができます。ただあまりしつこく問い詰めると子どもが逃げていきますので注意してください。子どもとの雑談の中でごく自然に「どうして?」「何で?」と質問するように意識してください。
国語力を高めると地頭が強くなる
よく「地頭が大切だ」という話を聞きますが、「地頭」とは何なのでしょうか?生まれつきの才能なのでしょうか?それとも後天的に身につける力でしょうか?
日米で教育に関わってきた私の経験から申し上げますと、地頭が良い子どもは新しい知識を早く身につけることができます。見聞きしたことを理解して、自分の中に落とし込む力が高く、さらに得た知識を再現したり、他のことに応用する力を持ち合わせています。
そう考えていくと「地頭が良い人」というのは「言葉の力が強い人」と言えるのではないでしょうか。常に言葉のアンテナを張り巡らせ、言葉をキャッチする能力が高ければ、周囲の人との対話や情報メディアを通して、新たな知識を獲得していくことができます。
また、地頭が良い人に共通する「問題解決能力の高さ」も言葉の力と関連しています。言葉(情報)を正しく理解し、言葉の本質を見極める力が備わっていれば、学校の勉強やテストでミスが少なくなることもちろん、日常生活のあらゆる場面において賢い判断ができるようになります。
ランゲージアーツは、言葉の力を強固にし、コミュニケーション力を高め、知的活動をサポートし、問題解決力を育成してくれます。何よりも言葉で伝える力が向上すると「よい人間関係」が構築できますから、子どもの生活が楽しく、豊かになるのです。