コロナ禍×夏休みで拡大する学力格差の矛先は弱者へ
夏休み明けに「サマースライド」と呼ばれる学力低下現象が起こる(写真はイメージ) cglade-iStock
<痛みを負うのは子どもたち。その中でも最もインパクトを受けたのが貧困層。移民の子どもたちは、英語の習得に欠かせない登校がなくなるとあれば、学力以前にこの米国で生きていくための術を学ぶ機会が減るのです>
コロナ禍による自宅待機が長引くアメリカで子どもたちの学力格差が広がっています。2021年の2月から3月にかけて全米で1000名の教育関係者に実施した調査では、97%以上が「何らかの学力ロスが発生している」と回答しています。学力ロスは貧困層(貧困地域)や家庭で英語以外の言語を話す移民の子どもたちに顕著に見られます。
オンライン授業で学力格差が拡大している
マッキンゼー(McKinsey & Company)は、2021年1月までに対面授業を再開しなければ「6.8ヶ月分の学力ロスが発生する」というリサーチ結果を発表しています。授業時間の減少に加え、オンライン授業への切り替えがスムーズに進まなかったことで年間カリキュラムをこなすことが難しくなっているのです。
オンライン授業への移行によって最もインパクトを受けたのが貧困層です。アメリカの公立学校の財源は各地方自治体の税金(主に固定資産税)と個人からの寄付金で成り立っています。そのため地域によって学校予算に格差が激しく、不平等であることはコロナ禍以前から問題視されていました。
資金が潤沢な富裕層地域の学校は、全生徒に無償でデジタルディバイスを支給し、パンデミック直後からオンライン授業への切り替えがスムーズに実現できました。貧困層地域では、ディバイスの支給がないことはもちろん、学校からオンライン授業の配信がされず、自宅待機中に全く授業を受けることができていない生徒も多く存在します。
対面授業の早期再開を目標に掲げるバイデン政権は、各州に対して教師や職員への接種を優先するよう要請、教育関係者へのワクチン接種を急ピッチで進めています。2021年2月の調査では、終日対面授業を再開している小学校は全米で約半数。残りの半数のうち24%は終日オンライン授業、そして76%が対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド授業を行なっています。