コロナ禍×夏休みで拡大する学力格差の矛先は弱者へ
置き去りにされる移民の子どもたち
英語を第二言語で学ぶ移民家庭の子どもたちもオンライン授業の拡大で大きな打撃を受けています。移民の子どもは、学校に通い、教師や友だちと「英語でコミュニケーションをとる」ことで英語力を短期間で身につけていきます。自宅待機が長期化し、対面コミュニケーションの機会が減少したことは、移民の子どもたちにとって大きな痛手です。
移民家庭が多いカリフォルニア州で2019年と2020年の小中学生のテストスコアを比較したところ、英語を第二言語で学ぶ小学5年生の英語テストのスコアが、例年よりも30%低くなっていることが分かりました。英語を母国語とする生徒の成績減少率は10%程度でしたので、移民の子どもたちにより大きな学力ロスが生じていることが分かります。
バイデン政権が行った調査でも、英語を第二言語で学ぶ子どもは、一般の生徒に比べて「対面授業の参加率が低い」ことが分かっています。移民の子どもの英語サポートは少人数を対象に専門の英語教師が行うため、経費と手間がかかります。多くの学校は通常クラスの授業再開を優先し、英語を第二言語で学ぶ子どもは後回しになっているのです。
またオンライン授業を行なっていても、子どもが教師と「ライブで過ごす時間」に大きな差があることが分かっています。オンライン授業を実施している学校の約3分の1は「1日5時間以上」のライブ指導を提供している一方、3分の1は「1日2時間以下」でした。さらに中学生にオンライン授業を実施している学校のうち、10%はライブ指導をまったく提供していませんでした。
全米の学齢期の子どもの10%に相当する約500万人が「English Language Learner/英語学習者」として英語を学んでいます。対面授業が減ったことで英語力の発達が遅れ、英語力の遅れが学力の遅れにつながり、学力の遅れはドロップアウトや不登校を引き起こすので深刻な問題です。
夏休み明けにサマースライドが起こる
アメリカでは6月から3ヶ月近い夏休みがスタートします。夏休み明けに「サマースライド」と呼ばれる学力低下現象が起こることが知られていますが、今年は「コロナ禍×サマースライド」により、子どもの学力格差が拡大することが懸念されています。アメリカの教育専門家は夏休みの学力ロスを抑えるために以下のような環境作りを推奨しています。
1)デジタル環境の充実化
デジタルディバイド(情報格差)を狭めるためにはインターネットへのアクセス環境を向上させることが必要です。全ての子どもが専用のデジタルディバイスを持ち、インターネットにアクセスできる環境を作ることで、教育上の多くの課題に対応できるようになります。
2)サマースクールへの参加
サマースクールは学力ロスを防ぐことはもちろん、普段とは異なる仲間との出会いがあり、子どもにとって豊かで、楽しい経験になります。各自治体は安価で参加できるサマースクールを拡充していますので検討してください。
3)家庭学習の強化
インターネットには無料または低コストで利用できる学習コンテンツがたくさんあります。夏休み中に家庭で学習活動に取り組むことで、学力ロスを防ぐことはもちろん、新学年にスムーズに学校適応できます。