最新記事

英語学習

アメリカでは子どもにどう英語を教えるのか?

2021年05月05日(水)22時40分
船津徹

英語教育のスタートは単語を読む力の育成

アメリカの義務教育は子どもが5歳になる年からキンダーガーテンでスタートします。キンダーガーテンは、教科学習にスムーズに適応するための準備学年(0年生)という位置付けで、1年間のみです。公立学校ではキンダーガーテンは小学校に併設されているのが一般的です。

キンダーガーテンの英語カリキュラムは、アルファベットの音、三文字単語の読み方、サイトワーズ(頻出単語)の読み書き、音節やライミング(音韻)の認識など、英語を読む最小単位である単語学習に重点が置かれています。

具体的にはフォニックスでアルファベット26文字と音の関係を指導します。フォニックスは英語の「かな五十音」に該当するもので「A=ア」「B=ブ」「C=ク」というように、アルファベットの「音」を教える指導です。

日本では「A=エイ、B=ビー、C=シー」とアルファベットの「名前」を教えることが多いですが、これを覚えても簡単な三文字単語の「BED」すら読むことができません。「BED=ビーエイーディー」になってしまいます。しかしフォニックスを学ぶと「BED=ブエド」と正しく読めるようになります。

フォニックスと合わせて指導するのが、英語の頻出単語であるサイトワーズ(sight words)です。キンダーガーテンではサイトワーズを「最低50語」覚えることが目標です。ちなみにサイトワーズの頻出10単語は「the, to, and, a, I, you, it, in said, for」です。これらの単語を一目で読めて、正しく書けるように指導します。

サイトワーズを指導する理由は明快です。全ての英語(書き言葉)の「約50%は頻出上位100単語」のサイトワーズで、そして、全ての英語の「65〜70%は頻出上位300単語」のサイトワーズで構成されているからです。300単語のサイトワーズを覚えるだけで、理屈では、どんな本も70%読めるようになるのですから、子どもたちに教えない手はありません。

小学低学年は好きな本の多読で読書力を鍛える

小学低学年の焦点は「リーディングフルエンシーの確立」です。リーディングフルエンシーは「読みの流暢さ」という意味で、簡単に言えば、本やテキストをスラスラと早いスピードで読み解ける力です。

アメリカの小学校(低学年)には、日本のような教科書がありません。子どもたちは、自分の興味や関心に合った本を自由に読むことができます。好きな本をたくさん読むことで、読書習慣が身につき、リーディング力を効果的に育成することができます。

小学低学年のテキストとして活用されているのが「リーダーズ」と呼ばれるレベル分けされた本のシリーズです。リーダーズには英語を第二言語で学ぶ学習者向けのグレーデドリーダーズ(Graded Readers)と、英語を母国語とする子ども向けのレベルドリーダーズ(Leveled Readers)があります。

どちらも単語レベル、単語数、文法に制限をつけて、段階的に難易度が上がっていくように工夫されています。初歩のリーダーズは1ページに数行程度の英文で、各ページにイラストがついており、読む力が弱い子どもでも読み進められるように工夫されています。

Renaissance Learning社の調査(2020年)によると、アメリカの子どもは小学1年生〜3年生の3年間で平均160冊の本(リーダーズ)を読むそうです。このデータからも、アメリカの初等教育が簡単な本の「多読」を通して子どもたちのリーディング力を育成していることが分かります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

LSEG、第1四半期決算は市場予想と一致 MSとの

ワールド

北朝鮮製武器輸送したロシア船、中国の港に停泊 衛星

ビジネス

大和証G、1―3月期経常利益は84%増 「4月も順

ビジネス

ソフトバンク、9月末の株主対象に株式10分割 株主
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    ミーガン・フォックスの「すっぴん」に「誰これ?」..…

  • 2

    サッチャーから気鋭の記者まで演じ、「Gスポット」を…

  • 3

    なぜ女性はクラウドファンディングの資金調達に成功…

  • 4

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    メーガン妃から「ロイヤルいちごジャム」を受け取っ…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    シャーロット王女の「プロフェッショナルぶり」に賞…

  • 4

    ミーガン・フォックスの「すっぴん」に「誰これ?」..…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    メーガン妃は「努力を感じさせない魅力がお見事」とS…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 5

    メーガン妃から「ロイヤルいちごジャム」を受け取っ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:世界が愛した日本アニメ30

特集:世界が愛した日本アニメ30

2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている