アメリカでは子どもにどう英語を教えるのか?
英語教育のスタートは単語を読む力の育成
アメリカの義務教育は子どもが5歳になる年からキンダーガーテンでスタートします。キンダーガーテンは、教科学習にスムーズに適応するための準備学年(0年生)という位置付けで、1年間のみです。公立学校ではキンダーガーテンは小学校に併設されているのが一般的です。
キンダーガーテンの英語カリキュラムは、アルファベットの音、三文字単語の読み方、サイトワーズ(頻出単語)の読み書き、音節やライミング(音韻)の認識など、英語を読む最小単位である単語学習に重点が置かれています。
具体的にはフォニックスでアルファベット26文字と音の関係を指導します。フォニックスは英語の「かな五十音」に該当するもので「A=ア」「B=ブ」「C=ク」というように、アルファベットの「音」を教える指導です。
日本では「A=エイ、B=ビー、C=シー」とアルファベットの「名前」を教えることが多いですが、これを覚えても簡単な三文字単語の「BED」すら読むことができません。「BED=ビーエイーディー」になってしまいます。しかしフォニックスを学ぶと「BED=ブエド」と正しく読めるようになります。
フォニックスと合わせて指導するのが、英語の頻出単語であるサイトワーズ(sight words)です。キンダーガーテンではサイトワーズを「最低50語」覚えることが目標です。ちなみにサイトワーズの頻出10単語は「the, to, and, a, I, you, it, in said, for」です。これらの単語を一目で読めて、正しく書けるように指導します。
サイトワーズを指導する理由は明快です。全ての英語(書き言葉)の「約50%は頻出上位100単語」のサイトワーズで、そして、全ての英語の「65〜70%は頻出上位300単語」のサイトワーズで構成されているからです。300単語のサイトワーズを覚えるだけで、理屈では、どんな本も70%読めるようになるのですから、子どもたちに教えない手はありません。
小学低学年は好きな本の多読で読書力を鍛える
小学低学年の焦点は「リーディングフルエンシーの確立」です。リーディングフルエンシーは「読みの流暢さ」という意味で、簡単に言えば、本やテキストをスラスラと早いスピードで読み解ける力です。
アメリカの小学校(低学年)には、日本のような教科書がありません。子どもたちは、自分の興味や関心に合った本を自由に読むことができます。好きな本をたくさん読むことで、読書習慣が身につき、リーディング力を効果的に育成することができます。
小学低学年のテキストとして活用されているのが「リーダーズ」と呼ばれるレベル分けされた本のシリーズです。リーダーズには英語を第二言語で学ぶ学習者向けのグレーデドリーダーズ(Graded Readers)と、英語を母国語とする子ども向けのレベルドリーダーズ(Leveled Readers)があります。
どちらも単語レベル、単語数、文法に制限をつけて、段階的に難易度が上がっていくように工夫されています。初歩のリーダーズは1ページに数行程度の英文で、各ページにイラストがついており、読む力が弱い子どもでも読み進められるように工夫されています。
Renaissance Learning社の調査(2020年)によると、アメリカの子どもは小学1年生〜3年生の3年間で平均160冊の本(リーダーズ)を読むそうです。このデータからも、アメリカの初等教育が簡単な本の「多読」を通して子どもたちのリーディング力を育成していることが分かります。