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検診コロナで広がる「検診」忌避の危うさ 女性が受けるべき6つの健康チェック
SIX TIPS FOR WOMEN’S CHECK-UPS
過去数十年で乳癌の生存率が上がったのには治療の進歩が貢献している CHOJA/ISTOCK
<コロナ禍でおろそかになりがちな子宮頸癌や乳癌の検診その効果や医師に相談すべきポイントを紹介する>
新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、病院は感染リスクが高いと考えて、医者にかかるのを敬遠する人もいるだろう(実際にはどのクリニックも感染対策は万全なのだが)。
特に女性は、在宅ワークをこなしながら家にいる家族の世話にも追われ、病院に行く時間も取れないとぼやく人も多い。
こうした状況では健康診断を受ける女性が大幅に減るのも無理はない。いい例が乳癌検診の受診率だ。私たちが調査を行っているオーストラリアでは、2020年1月から6月までの半年間に乳癌検診を受けた人の数は18年の同時期と比べざっと14万5000人減った。こうした傾向はほかの国でも見られるだろう。
コロナ禍のせいで、癌などほかの疾患が自覚症状のないまま進行してしまう事態は何としても避けなければならない。ここで紹介するのはオーストラリアの家庭医の団体である「王立オーストラリア家庭医学会」(RACGP)が女性に推奨する主な健康チェックだ。
家庭医とは体調が悪いときに最初にかかる地域の総合診療医のこと。RACGPが推奨する受診頻度などは、平均的な罹患リスクの女性を対象としたもので、親族に罹患者が多いなどリスクが高い人は、家庭医に相談してもっと頻繁に受診するか、あるいは違うタイプの検査を受けるか検討してほしい。
感染拡大で急減した子宮頸癌の検診受診率
オーストラリアでは25歳から74歳の女性は5年に1度検診を受けるよう推奨されている。以前は2年に1度だったが、17年に新しい検査が導入され、より早期の発見が可能になったため5年に1度でよくなった。
そのため19年12月以降は月々の検査件数が以前より減ったが、それを勘案しても20 年4月と5月の落ち込みは激しい。6月に少し回復したが、感染拡大がなかなか収まらなかったビクトリア州は低いままだった。
子宮頸癌検診では子宮と卵巣を調べるため、以前は骨盤内炎症性疾患の検査も同時に行われていたが、正確さが劣るため今はこのやり方は推奨されていない。
十分な情報を得て受けるべき乳癌チェック
50歳から74歳の女性はマンモグラフィー(乳房専門のX線撮影)を2年に1度受けるよう推奨されている。オーストラリアでは乳癌検診は4月に一時中止されたが、今は全土で再開されている。
乳癌検診のベネフィットとリスクを示す疫学データは拮抗しているので、医師とよく話し合い、十分な情報を得て受けるかどうかを決めてほしい。オーストラリアのデータでは、50歳から74歳まで2年に1度検診を受ければ、1000人に8人前後の確率で乳癌による死を防げることが分かっている。一方で検診を受けたために本来は必要でなかった手術などの治療が行われる確率も1000人に8人ある。
検診では症状が出る前に早期に癌を発見できるが、進行が非常に遅いか自然に消えてしまい、生きている間に何のトラブルも起こさないような癌が見つかることもあるのだ。MRI(磁気共鳴映像法)などより感度の高い検査では、この「過剰診断」の確率が高まる。
過去数十年に乳癌の生存率は大幅に改善されたが、検査の精度向上ではなく、治療の進歩が大きく貢献していると考えられる。
発見が遅れがちな卵巣癌は注意
残念ながら卵巣癌は早期発見ができず、はっきりした症状も出にくく、発見が遅れがちだ。よくある症状は、おなかが張る、腹痛、腰痛、食欲低下、すぐに満腹になる、消化不良、頻尿や強い尿意、便秘、原因不明の体重減少や疲労感。こうした症状のどれかが数週間以上続く場合は家庭医に診てもらうこと。
若年層は定期的に性感染症のチェックを
オーストラリアの20代の女性では、20人に1人がクラミジア、200人に1人が淋病に感染している。こうした細菌に感染していると、骨盤内炎症性疾患や不妊症のリスクが高まる。HIV、B型肝炎、梅毒の感染率はもっと低いが、早期に見つけることが重要だ。
RACGPは30歳未満の性的に活発な女性は定期的に検査を受けるよう推奨している。特にセックスパートナーが変わったときは要注意だ。
検査と治療で防げる心血管疾患と糖尿病
オーストラリアでは女性の主要な死因は高い順に認知症、心臓病、脳卒中、肺癌だ。これらの疾患のリスクは予防医学で軽減できる。
RACGPは、18歳以上の女性は2年に1度血圧の検査、45歳以降は5年に1度コレステロールの検査、さらに親族に罹患者がいるなどリスクが高い場合は、糖尿病と腎臓病の検査も受けるよう推奨している。
RACGPはまた45歳から49歳までは総合的な健康診断、45歳以上では心臓病の検査を受けるよう推奨している。オーストラリアでは高血圧や高コレステロール血症の治療が普及し、喫煙率が下がったおかげで、1960年代をピークに心臓病で亡くなる人は大幅に減った。ただ女性の場合、特に比較的若い年齢層では高血圧や高コレステロール血症であっても、同じリスクレベルの男性と比べ投薬治療を受けている人の割合が少ない。心臓病のあらゆるリスク要因について検査を受け、必要な治療を受けてほしい。
検便で死亡率が減る大腸癌
大腸癌の検査は50歳から74歳までは男女を問わず全てのオーストラリア人が2年に1度受けるよう推奨されている。これは便潜血検査、つまり検便で実施される。オーストラリアでは国立大腸癌検査プログラムから検査キットが郵送されるので、自宅で採取した検体を郵送すればいい。簡単な検査だが、大腸癌の死亡率を16%減らす効果が確認されている。
新型コロナウイルスとの闘いはもうしばらく続きそうだが、病院離れ・検査離れでほかの病気が増えることが危惧されている。特に女性たちは自分のことより家族の健康を優先しがちだが、女性特有の病気や女性がかかりやすい病気の検査をしっかり受けてほしい。
Jenny Doust, Clinical Professorial Research Fellow, The University of Queensland and Gita Mishra, Professor of Life Course Epidemiology, Faculty of Medicine, The University of Queensland
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.