子どもを育てるのは都会か、田舎か?
選択肢が多いことは本当に豊かなのか?
都会に住み、教育の選択肢が多くあることは一見すると「豊か」なように思えます。しかし選択肢が多すぎると、人はベストな選択ができなくなってしまうという研究報告があります。
「選択」研究の第一人者、コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授は「選択肢の過剰は弊害のほうが大きい。選択肢が多すぎると、人は正しい判断ができなくなり、選択しないことを選択する」と言います。
スワスモア大学のパリー・シュワルツ心理学博士は「選択肢の多さが人々の幸福度を下げている。間違った選択をしてはならないというプレッシャーを与え、選ばなかった方の選択肢が頭から離れず、後悔する。また選択肢が多いと、選択したものへの期待値が高まり、何を選んでも満足できない。」と述べています。
都会は教育の選択肢は多いですが、多すぎて何を選んでいいのか分からない、どれを選んでも今ひとつ満足できない、高いお金を払っているのだからと教育を塾や学校に丸投げしてしまう、などの問題がつきまといます。
田舎に住んでいる人は、教育の選択肢が少なく、都会に比べて不利だと感じることが多いかもしれません。しかし選択肢がないが故に、親が「人の手を借りずに自分で立派に育てる」という覚悟を持ちやすい環境とも言えます。
子どもの持つ才能や資質を引き出し、伸ばす適任者は「親」です。学校や習い事は一人の先生が複数の子どもを見ますから、子ども一人ひとりの資質に合った指導を期待しても無理なのです。都会に住み、たくさんの選択肢の中から最高の環境を見つけたからと、子どもの教育を丸投げしてしまうと、才能の芽が伸び止まってしまう可能性があるのです。
子どもの基本的資質を育てるのは家庭
私はロサンゼルスや上海という大都会、そしてアメリカの田舎であるハワイで学習塾を経営しています。これまでたくさんの子どもたちを見てきましたが、世界中のどこに住んでいようと「小学生までの」子どもの基本的な能力や資質を育てるのは「家庭教育」です。
親子関係が良好であるほど周囲の話をよく聞ける子に育ちます。家庭で本に親しんでいるほど語彙数が豊かで、読解力が高い子に育ちます。生活習慣づくりに配慮している家庭ほど心身が健康で集中力の高い子に育ちます。
勉強ができる子、伸び続ける子、やる気のある子は、家庭のサポートによって良い習慣を身につけてもらっているのです。これらの習慣は学校の先生が教えても定着しません。子どもにとって一番身近で、信頼できる存在である親が、毎日の生活の中で、時間をかけて育てていくことが必要です。
そう考えると「都会か、田舎か」は子どもにとって大きな問題ではないことに気づきます。大切なのは「親が」子どもの良い面を見出し、伸ばしてあげること。学校生活を楽しむために必要な学力とソーシャルスキル(社会性)を「家庭で」身につけさせることです。この二つを実践すれば、子どもはどんな環境にもスムーズに適応し、有意義な学びを実現することができます。
また親は、自分の住む場所の「悪い面」に目を向けるのでなく「良い面」を見出し、子どもの教育に活用することを意識してください。
田舎では、自然に親しんだり、外で思い切り身体を動かしたり、地域に伝わる伝統芸能や文化活動に参加したり、都会では味わえない良さがたくさん経験できます。また田舎はコミュニティーが結束していますから、親以外の様々な大人と接する機会を多く提供してくれます。
都会には、博物館、美術館、水族館、動物園、図書館、児童館などの施設がたくさんあり、様々なイベントが開催されています。これらを子どもの教育に活用してください。住む場所も子育ても「良い面」に目を向けることが成功の秘訣です。
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