子どもを育てるのは都会か、田舎か?
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<実は子どもにとって「都会か、田舎か」は大きな問題ではない? 住む場所も子育ても失敗しないために押さえておきたいこと>
新型コロナウィルスのパンデミックが長引く中、都会を離れ、地方暮らしを選択する人が世界中で増えています。ニューヨークポスト紙はコロナの大流行から半年余りで少なくとも30万人がニューヨークを去ったと報じています。ロンドンでは、移民労働者を中心に約70万人が街を離れた可能性があるとされ、東京都も2020年の7月以降、転出者数が転入者数を超える「転出超過」が続いています。
教育の多様化と競争の激化が進む都会
リモートワークへのシフトが進む中、子育て中の家庭でも都会脱出を考える人が増えています。狭苦しく、三密に陥りがちな都会を離れ、地方で伸び伸びと子どもを育てたいという思いは、コロナ禍で不自由な生活を強いられている都会人の頭を一度はよぎることでしょう。しかし、子どもの教育面の充実度を考えるとなかなか行動に踏み切れないというのが実情のようです。
確かに教育環境に関しては、田舎に比べて都会は選択肢が豊富です。東京都内を見ても、伝統ある私立学校、中高一環教育校、モンテッソーリやシュタイナーを実践する学校、国際的教育基準である国際バカロレア認定校、バイリンガルを育てるためのイマージョンスクールやインターナショナルスクールなど、多種多様な学校があります。
都会で暮らせば、我が子にベストマッチの学校に通わせ、様々な習い事を体験させることができるので、子どもにとってメリットが大きい、教育熱心な親はそう考えることでしょう。しかし都会は選択肢が豊かであると同時に「競争が激しい」ことも考慮する必要があります。
世界一教育熱心と言われる韓国ではコロナ禍でもソウルへの一極集中が止まりません。子どもにハイレベルな教育環境を求める親たちが、地方からソウルに移り住んで来るからです。ソウル市の不動産価格は上昇を続け、2021年の1月には9億ウォン(約8500万円)を超える高額マンションの割合が全体の半数を上回りました。
人口集中に伴い、加熱していた受験競争がさらに激化しています。良い大学に入れるためには早期教育が大切と子どもを英才教室に通わせ、グローバル社会で生き残るには英語が必須と英語学校に通わせ、情操教育のためとピアノ教室やバイオリン教室に通わせるのはソウルでは当たり前です。
ソウルの子どもたちは物心ついた頃から勉強漬け、習い事漬けで成長していきます。友だちと自由に遊んだり、好きなことや興味あることに没頭することができず、熾烈な競争に心が折れて燃え尽きたり、ウツになる子どもが社会問題化しています。