社会で必要なのに日本人家庭で教えないスキル
フィジカルな対面は憚られコミュニケーションが難しい時代に突入(写真はイメージ) LeoPatrizi-iStock
<人間同士の関わりが希薄になる一方で、社会の多様化はコミュニケーション力の重要性は増すばかり。日本人の親は表面的な礼儀は教えても、どうしたら人と打ち解けられるのか? その具体的な技術を教えている家庭は多くはないでしょう>
2018年に経団連が実施した「新卒採用に関するアンケート調査」によると、選考にあたって一番重視されたのは「コミュニケーション能力」でした。リクルートキャリアがまとめた「就職白書2020」によると、企業が採用基準で重視する点の第一は「人柄」でした。
社会が多様化するほどコミュニケーション力が重要になる
これまで日本の子育てで「コミュニケーション力」が重視されることはほとんどありませんでした。わざわざ子どもにコミュニケーションの方法を教えなくても集団社会に参加すれば自然に身につくと思われていたからです。
ところがこの数十年で日本社会もすっかり変わり、外国人の観光客や労働者も増えてきました。また日本人同士であっても、育ってきた地域や文化、世代や性別によって違った価値観があってもいいではないか、もっと多様な生き方を認める社会を実現すべきだ、という流れが出てきています。
どんな仕事をしていても、どんな地域に住んでいたとしても関係ありません。時が経つにつれて、多様な文化や考え方が生まれ続けていくでしょう。その中では、コミュニケーション力がなければ意思疎通ができない、人間関係を作れない、就職や仕事がスムーズにいかないなど、多くの障害が生まれてきます。
子どもたちの人生の選択肢を広げ、生活を楽しくするには、いつ・どんな環境になっても、周囲の人たちと信頼関係を作るコミュニケーション力が不可欠です。とはいえ、一つひとつのアクションは単純なものです。親が子どもの手本となって人付き合いのルールを教えればいいのです。
たとえば「相手の目を見て笑顔であいさつする」。
世界では、笑顔は「自分は危ない人ではありません」「私はフレンドリーです」というアピールであり、コミュニケーションの基本です。笑顔であいさつができない人はコミュニケーションの輪に入れてもらえません。輪に入れなければ、人間関係がつくれません。
笑顔一つできるかできないかで、人間関係、子どもの場合には人格形成にも大きな影響が出てくるのです。この傾向はさまざまな文化・民族・価値観が入り混じる社会ほど顕著になります。