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大学入試でペーパーテスト廃止! の影響

2020年10月13日(火)18時15分
船津徹

共通テストスコアは大学の成績との関連性が低いとの報告も(写真はイメージ) mediaphotos-iStock

<一発勝負のペーパーテストで合否が決まるのは「不公平」という画期的な判決。大学入試は「テスト慣れ」だけでは乗り切れない時代がくる?>

去る8月31日にカリフォルニア州アラメダ郡高等裁判所は、UC BerkeleyやUCLAなど10公立大学が参加するカリフォルニア大学システムに対して「SAT」や「ACT」と呼ばれる大学入学共通テストのスコアを入学選考で使用することを禁止する命令を出しました。

大学入学共通テストは、貧困層、人種マイノリティー、障がい者など社会的弱者にとって不公平であり「差別」に当たるという理由ですが、この判決以前からアメリカでは共通テストは裕福層に有利であるとして批判が高まっていました。

共通テストは社会的弱者にとって不平等

日本では「公平性」を保つために「一発勝負のテストスコア」で合否を決める受験方法が一般的です。しかしペーパーテストのスコアそのものが「不公平である」というこの決定は、世界の大学入試のあり方にインパクトを与えることでしょう。

カリフォルニア大学バークレー校の研究者ソール・ゲイザー(Saul Geiser)は、カリファルニア大学システムの受験生160万人のSATスコア、高校の成績、家庭の経済力の相関性を分析しました。

その結果、SATの成績上位10%のうち貧困層はわずか5%であったのに対して、高校の成績上位10%のうち貧困層は23%を占めることを発見しました。つまりSATスコアは(学校の成績に比べて)裕福層ほどハイスコアが取りやすく、貧困層にとって不利であることが分かったのです。

全米大学入学共通テストを実施するカレッジボードは、SATスコア、高校の成績、人種グループの関連性を調査しました。その結果、SATスコアが高く、成績が低いグループ(手抜きタイプ)には裕福層の白人男性が多く、SATスコアが低く、成績が高いグループ(コツコツタイプ)には貧困層のマイノリティ女性が多いことが分かりました。

私はアメリカで学習塾を経営していますが、確かにSATやACTのスコアは試験対策をするほどスコアが上がる傾向があります。マークシート方式で問題数が多く、ひっかけ問題も一定数出題されるので、本番前に「テスト慣れ」しておくことでスコアが上がる確率が高まるのです。

当然、SAT対策を提供している私立進学校の生徒や学習塾が実施するSAT対策コースを受講できる子どもほどハイスコアが取りやすくなります。さらにアメリカの大学入学共通テストは何回でも受験でき、かつ、最高点だけを大学に提出できるシステムがあるので、複数回受験できる生徒にとって有利なのです。

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