大学入試でペーパーテスト廃止! の影響
大学でのパフォーマンスを決定する要因は何か?
しかし合否判断からペーパーテストのスコアを除外しても大学の学力レベルを維持することができるのでしょうか?
ベイツ大学の入学選考担当者ウィリアム・ヒス(William Hiss)が同大学に通う12万3,000人の学生を追跡調査したところ、大学での成績を予測できる最大のファクターは、共通テストのスコアでなく、高校時代を通しての成績であることを発見しました。
シカゴ大学のエレイン・アレンスワース(Elaine Allensworth)とカイリー・クラーク(Kallie Clark)が同大学の卒業生5万5,000人を調査した所、高校時代の成績は、ACTテストのスコアよりも「5倍正確に」大学でのパフォーマンスを予測できることを発見しました。
アレンスワース博士は「高校の成績は学校のレベルや地域によって差が大きく、全国共通テストに比べて一貫性に欠けると考えられてきました。しかし実際には高校の成績は大学の成績と比例する一方で、共通テストスコアは大学の成績との関連性が低いことが分かった」と述べています。
前述したカレッジボードの調査でも、高校時代を通して成績が良い「コツコツタイプ」の学生は、テストスコアが高く高校時代の成績が低い「手抜きタイプ」の学生よりも大学で良い成績を収めることが分かっています。
高校時代を通して真剣に学業に取り組んできた生徒ほど大学でも良い成績を収めるというのは誰にとっても理解できる話です。これまでのように共通テストのスコアに重点を置いて合否判断をすると、大学にとって本当に必要な人材を見落としてしまう可能性があるわけです。
アメリカのAO入試は何を重視しているのか?
アメリカの大学入試は全て「AO入試」と呼ばれる方法で合否を決定します。AOとは「Admission Office」の略で、入学選考に関わる一切の業務を行う部署の名称です。AO入試では、単に学力だけを見るのでなく、エッセイや推薦状など、多面的視点から学生を選抜します。
全米のAO担当者を対象に実施している調査報告書の最新版(NACAC 2019)によると、合否判断において重視する要素の順位は以下の通りでした。
1)高校時代の成績
2)大学準備コースの成績
3)学校カリキュラムの難易度
4)共通テストスコア
5)エッセイ
6)大学への関心の高さ
7)カウンセラーの推薦状
8)先生の推薦状
9)学年の成績順位
10)課外活動の実績
この調査は毎年行われていますが、共通テストスコアの比重は減少傾向にあり、高校時代の成績は上昇傾向にあります。AO担当者の視点が、テストスコアよりも高校時代を通してどれだけ頑張ってきたのかという「やる気」をより評価するように変化してきていることが読み取れます。