大学入試でペーパーテスト廃止! の影響
もう一つ重要性が増しているのが「大学準備コースの成績」です。具体的にはAP(アドバンスプレイスメント)と呼ばれる大学教養課程の先取りコースやIB(インターナショナルバカロレア)と呼ばれる国際的な高校卒業資格コースの履修歴が重視されるようになっています。
一般にアメリカの大学受験には日本のような「学部受験」や「理系・文系の区別」はありません。医者を目指そうが、弁護士を目指そうが、すべての受験生は志望大学の教養課程を受験します。そのため大学は「大学準備コース」によって学生の興味分野や専門性を見極めようとしているのです。
例えば医学を目指す学生であれば、生物学、化学、物理学のAPコースでの成績が将来の成功を予測すると言われています。ビジネスを目指すのであれば微分積分や統計学など数字に関連するAPコースの履修が重視されます。
以上のようにアメリカの大学は、テストスコアよりも学生の「やる気」や「専門性」を評価する方向へとシフトしてきています。大学に入ってからも努力を継続していく人材、自分の目指す分野でリーダーシップを発揮できる学生を発掘しようとしているのです。
世界大学ランキングはアメリカがトップを独占
テストスコアで合否決定をする受験システムに比べて大きな手間と時間を要するアメリカのAO入試ですが、それなりの成果を上げています。
英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによる最新の世界大学ランキングを見ると、トップ10大学のうち8大学をアメリカが独占しています。さらにトップ50大学のうち半数以上の26大学がアメリカの大学です。日本は東京大学が36位にランクしているのみですから、いかにアメリカの大学が世界から優秀な人材を集めることに成功しているのかが分かります。
グローバル化が進んだ今、早稲田大学、慶應大学、上智大学など、日本のトップ大学でもIBスコアを使ったAO入試を取り入れる動きが広がっています。大学進学後も伸び続ける「やる気」のある人材を発掘するために、日本の大学入試も多様化が進んでいくことは間違いありません。
[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。