マスク論争で露呈した、アメリカを崩壊させるナルシシズムのパンデミック
自尊心が高い人とナルシシストは似て非なるものです。ナルシシストは自分を他人と比べる傾向が強く、人からほめられたり、周りから注目されたり、自分を人より良く見せることに熱心です。ソーシャルメディアにはナルシシスト予備軍が溢れています。セルフィーを多くアップしている人、頻繁にプロフィール写真を変える人、SNSの「いいね」の数や友だちの数を気にする人、人の記事を過剰にシェアする人などはナルシシスト予備軍と考えられています。
自尊心が高い人は自分を周りと比較して優越をつけません。人の評価をあまり気にしないのです。あるがままの自分に心地よさを感じていますから、人からほめられようと必死になったり、自分を必要以上に良く見せて注目されることを求める必要がないのです。
大人が子どもを教育する時「自由と勝手」の線引きを明確にしなければなりません。何でも好き勝手にやらせるのではなく、子どもの行動や言動に「他者への気遣い」がない時は厳しく叱ることが必要です。自分の自由を追求するのであれば、他者の自由を奪ってはいけないことを教えるのが大人の役割です。
アメリカの「自由の精神」は人々に夢と希望を与える素晴らしい文化です。しかし個人の自由の追求は、自分優先を蔓延させ、回り回って自由を失う社会につながる危険性を孕んでいる。そのことを新型コロナウィルスのパンデミックが暗示しているように感じるのは私だけでしょうか。
[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。
10月6日号(9月29日発売)は「感染症vs国家」特集。新型コロナに最も正しく対応した国は? 各国の成功例と失敗例に学ぶ。