最新記事

ドキュメンタリー

ゲーム史の追憶番組『ハイスコア:ゲーム黄金時代』が残念な理由

An “Easy Mode” Documentary

2020年09月10日(木)16時45分
ベンジャミン・フリシュ

『ファイナルファンタジー』を手がけた天野(左上)や『パックマン』の生みの親の岩谷徹(右下)ら名作ゲームに関わった人々が次々に登場する NETFLIX

<ビデオゲームの草創期を描くネットフリックスの『ハイスコア』は見どころは多いものの業界関係者の逸話の寄せ集めに終わっている>

ネットフリックスの新作『ハイスコア:ゲーム黄金時代』(全6話)は、ビデオゲームの草創期の歴史に焦点を当てたドキュメンタリーだ。ゲーム業界の魅力的な人々や、チカチカ光るゲームセンターのゲーム機、楽しいドット絵のアニメーションや美しい映像が代わる代わる登場する。

1980年代から90年代にかけてのゲームへのノスタルジーに満ちている作品で、見ているといい気分になってくる。だが視聴者の思い込みを覆すような内容や、ゲームへの理解を深めようとする姿勢には欠けている。

人物を中心に描いているせいで、ゲーム史の中の特定の時代を語るというよりは、その時代に活躍した業界関係者の逸話の寄せ集めになっている。逸話と逸話をつなぐのは、マリオの声でおなじみのチャールズ・マーティネーのナレーションだ。

それがうまくいった回もある。第3話「ロールプレイング」で取り上げられるのはゲーム通ならば納得の顔触れだ。

80年代初頭にグラフィックを用いたアドベンチャーゲームを作り出した先駆者で、『キングス・クエスト』の生みの親であるロベルタ・ウィリアムズと夫のケン。81年に発売されたオープンワールド型ロールプレイングゲーム『ウルティマ』を手掛けたリチャード・ギャリオットも登場する。『ファイナルファンタジー』のキャラクターデザインを手掛けたイラストレーターの天野喜孝のスタジオを訪問するといった、やや想定外の「寄り道」もある。

影響の連鎖を取り上げず

性的少数派に光を当てたゲームとしては先駆的存在である92年の『ゲイブレード』の開発者、ライアン・べストにも光を当てる。「ダンジョンに住む嫌らしい右翼の怪物からネルダ皇后を救い出す」というアドベンチャーゲームで、当時、同性愛者を攻撃していた政治家のパット・ブキャナンを連想させるキャラクターがラスボスだ。ゲーム草創期を担ったパイオニアたちの多様性に思いをはせるきっかけになるかもしれない。

だが、このジャンルの歴史の解説としては、まさに継ぎはぎの印象だ。『ウルティマ』とギャリオットばかりにスポットライトを当て、同じ年に出て、同じくらい重要な『ウィザードリィ』は脇に追いやられている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ビジネス

独総合PMI、11月は2月以来の低水準 サービスが

ビジネス

仏総合PMI、11月は44.8に低下 新規受注が大

ビジネス

印財閥アダニ、資金調達に支障も 会長起訴で投資家の
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 5

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...…

  • 4

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 5

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること