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「英語下手」だった韓国人の英語力が向上したワケ

2020年09月01日(火)17時30分
船津徹

LeoPatrizi-iStock

<日本では今年度から公立小学校での英語教育が本格化しましたが、韓国では既に20年以上も前に小学3年から英語が必修化されています。韓国人の英語力向上の背景にあるものとは?>

20年前までは日本と並んで「英語下手」で知られていた韓国ですが、近年は急速に英語力を伸ばしています。2017年のTOEFL iBT平均スコアを見ると、アジア29カ国中11位と、英語が公用語である香港と肩を並べるレベルまで英語力を向上させています。同年の日本のスコアは29カ国中27位で、過去20年間、下から3〜4番のままです。

日本よりも早くグローバル化の波に飲み込まれた韓国

なぜ韓国は英語力を向上させることに成功したのでしょうか?

韓国が英語と本気で向き合うきっかけとなったのが、1997年に起きたアジア通貨危機です。通貨危機で韓国ウォンが暴落。外貨建て債務が膨れ上がり経営難に陥った韓国企業は生き残りをかけてグローバル化に着手しました。この改革は成功し、サムスン電子、現代自動車、LGエレクトロニクスなどが国際的に活躍するグローバル企業へと躍進したことは記憶に新しいと思います。

グローバル化に伴い、財閥系企業に就職するためには「高い英語力」が要求されるようになりました。例えばサムスン電子に採用されるにはTOEICが900点以上、留学経験は当たり前と言われるほど高い英語力が求められるようになり、韓国のトップ大学を卒業しても「英語ができなければ一流企業に就職できない」という事態を引き起こしたのです。

通貨危機をきっかけに韓国政府も国家を挙げたグローバル化政策に取り組み始めました。1997年の英語教育改革によって、それまで小学4年から特別活動として行なわれていた英語を、小学3年からの正式教科へ格上げしました。(2008年からは小学1年から英語教育がスタート)学習内容も受験を念頭に置いた文法訳読法からリスニング、スピーキング、ライティングなど、実用性重視のカリキュラムへと方向転換したのです。

韓国社会がグローバル化に対応するプロセスで起きた環境の変化が「英語ができなければ負け組決定」という風潮をもたらし、もともと世界一教育熱心で知られる韓国人たちの「英語熱」に火をつけたのです。

英語は小学生時代にやっつける!英語の早期化が進行

1997年の英語教育改革に先駆けてコリアリサーチが小学生の保護者を対象に行った調査では「英語は早ければ早いほど効果がある」「一流企業へ就職するためには英語は当然である」など、英語教育早期化への賛成意見が多数を占めました。

2005年に京仁大学が幼稚園と小学校の保護者を対象に行った「小学1年生からの英語教育導入に関する意識調査」では、保護者の84.7%が小学1年よりもさらに早い「幼稚園からの英語教育」を求めていることが分かりました。

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