「英語下手」だった韓国人の英語力が向上したワケ
英語教育改革の実施によって、小・中・高の子どもが英語圏に留学する「早期留学」がブームになりました。韓国教育開発院の統計によると、早期留学生数は2000年から急増し、ピークの2006年には2万9000人になりました。韓国で義務教育を受けている子ども(小・中・高)のうち、海外留学経験者が38%という大きな数字となっています。
韓国人の留学動向で特筆すべきは、小学生の留学者が中学生・高校生よりも多いことです。熾烈な受験戦争が存在する韓国では、中高生時代の留学は大学受験で不利になると考えられているのです。
留学で大学受験を犠牲にしたくない。でも英語ができるようにしなければならない。であれば時間に余裕がある小学生時代に留学させて英語力を身につけ、韓国へ戻ってからは大学受験に備えさせよう、というパターンが韓国の親の間で定番化したのです。
ハワイにも波及した韓国の英語熱
小学生の留学には母親が同伴するのが一般的です。父親は韓国に残って働き、生活費を留学先に送る生活を余儀なくされます。子どもの留学のために多額のお金を稼がなければならない上に、韓国に一人残された父親が寂しさから鬱になったり、家庭崩壊につながるなど、英語熱の弊害が社会問題化(キロギアッパ問題)したことはご存知の方も多いかと思います。
韓国が英語ブーム真っただ中であった2001年、私はハワイでグローバル人材育成を目的とした英語塾を開校しました。韓国語での広告を一切出していないにも関わらず、韓国からの早期留学生がたくさん私の塾を訪れてきたので、とても驚いたことを覚えています。
早期留学を実践している母親に話を聞くと、韓国は英語の教育費(塾や家庭教師)が高額なので、いっそのことアメリカに移り住んで教育を受けさせた方が安価で、子どもへの学習負担が少ないとのことでした。
とは言え早期留学を実現できるのはごく一部の裕福層です。多くの子どもは韓国に住みながら、努力を重ねて英語を身につけなければなりません。韓国では英語ができなければ「負け組決定」ですから子どもたちも必死なのです。
ベネッセコーポレーションが2007年に実施した「学習基本調査・国際6都市調査」によると、ソウル市内で英語塾に通う子どもの割合は51.9%で、東京都の18.1%に比べてはるかに高い数字でした。
毎日5〜6時間ネイティブの英語レッスンを受ける
韓国の英語塾は、日本の英会話学校のように週1〜2回、1時間程度のレッスンを受けるという生易しいものではありません。学校が終ってから週に3〜5日塾に通い、毎回3時間〜6時間、ネイティブ講師から英語オンリーのレッスンを受けるというスタイルです。
英語塾の指導レベルは高く、英語ネイティブ向けの小説やニュースを読んでディスカッションをしたり、SATテスト(アメリカの大学入試共通テスト)対策やエッセイライティングを教えるなど、ハイレベルな授業が行われているそうです。
留学せず韓国国内で高度な英語力を身につけるには、それなりの努力を子どもに強いるのです。毎日のように英語塾で5〜6時間、英語ネイティブの授業を受けるのですから、インターナショナルスクールに通っているようなものです。
英語熱の高まりは大学進学にも変化をもたらしました。それまで成績優秀な韓国人が目指していたのはソウル大学、延世大学という韓国のトップ大学でした。ところが英語という武器を手に入れた韓国人学生は、もはや韓国のトップ大学では物足りなくなったのです。そしてアメリカやイギリスのトップ大学、すなわち世界のトップ大学を目指すようになりました。
国際教育協会(Institute of International Education)の集計によると、2015年にアメリカの大学に通う韓国人学生数は6万3千人で、中国(30万4千人)、インド(13万2千人)に次ぐ数字になっています。同年の日本人留学生数は1万9千人で韓国人の三分の一以下です。韓国の人口が日本の半分以下であることを考えると、韓国人のアメリカ大学への情熱の高さが伺えます。
さらに付け加えれば、アメリカの大学ならどこでも良いというわけではありません。韓国人が目指しているのは、アメリカでもトップ大学であるハーバード大学、イェール大学、プリンストン大学、ペンシルバニア大学、ブラウン大学などのアイビーリーグ大学です。
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