恋人同士の「好き」より複雑──女性による女性たちの青春ラブコメ
A Gender-flipped Teen Comedy
頭でっかちな「ブックスマート」のモリー(左)とエイミーが高校生活最後の大勝負にでる ©2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
<ガリ勉、オタク、未経験、卒業パーティー......女の友情と音楽(と下ネタ)がはじける学園ドラマ『ブックスマート』>
女優オリビア・ワイルドの長編監督デビュー作『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』は、2007年の青春コメディー『スーパーバッド 童貞ウォーズ』と何かと比較される。
長年の親友同士で周囲から浮いている2人のティーンエージャーが、高校の卒業パーティーという未知の世界に飛び込み、徹夜で冒険を繰り広げる。頭の中は性的な妄想でいっぱいだが、最後は心温まる結末を迎えて──。
コメディー俳優の新世代が羽ばたいたことも2作の共通点だが、1つ重要な違いがある。『ブックスマート』の場合は監督、4人の脚本家、主演のビーニー・フェルドスタイン(『スーパーバッド』の主演ジョナ・ヒルの妹)とケイトリン・デバーなど、女性がチームを組んでいるのだ。
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女性監督による青春映画としては、17年の『レディ・バード』も記憶に新しい。親密だが複雑な女の友情、聡明なティーンエージャーの愛すべき背伸び、終わってしまう高校生活へのノスタルジー。
ただし、『ブックスマート』は確かに青春コメディーの王道だが、物語の核心である友情の描き方の濃さは、他の作品と一線を画している。モリー(フェルドスタイン)とエイミー(デバー)の関係は時に恋愛のように激しく、緊張も走るが、恋人同士の「好き」より複雑だ。
エイミーは、全くの未経験ながらレズビアン。モリーは、やはり未経験のストレート。2人はそれぞれ相手の専属ライフコーチであり、ワードローブコンサルタントであり、恋愛の応援団でもある。
エイミーは、スケートボードが得意なイケてる同級生女子ライアン(ビクトリア・ルエスガ)を見ているだけで胸がドキドキ。モリーは話し掛けろとエイミーをけしかける。
卒業生総代に選ばれた堅物のモリーは、エール大学に進学することが自慢。そんな彼女が、頭は軽量級のニック(メイソン・グッディング)への恋心を打ち明けると、エイミーは親友が行動を起こすチャンスを見つけようとする。
卒業式の前日、モリーの少々強引な主張で、2人はニックが主催するパーティーに行こうと決心する。ただし、問題があった。2人とも招待されていないこと。パーティーの参加者の誰とも仲良くないこと。そして、会場が分からないこと。物語の前半3分 の1は、パーティーが開かれる場所を突き止めることに費やされる。
めくるめく夜の行方は
ライドシェアのリフトで車を呼んだら、運転手は何と副業中のブラウン校長(実生活ではワイルドのパートナーのジェイソン・サダイキス)。ほかにもいくつかハプニングを乗り越え、2人が慕う担任ミス・ファイン(ジェシカ・ウィリアムズ)の助けを借りて、モリーとエイミーはニックのパーティーにたどり着く。
そこには陽気なバカ騒ぎと真実の愛(あるいは、それなりのセックス)が待っている──はずだった。