人気イラストレーター、ダンシングスネイルが提案する「完璧主義な自分を抜け出す方法」
『怠けてるのではなく、充電中です。』48ページより
<「完璧じゃないからもっと改善しなくてはいけない」と考える心の存在に気付かなければ、自分で自分を攻撃してしまう。自身、無気力症や不安症を患っていた韓国人イラストレーターからの「今日もただ存在できますように」のメッセージ>
『死にたいけどトッポッキは食べたい』(ペク・セヒ著、山口ミル訳、光文社)ほか、韓国で多くのベストセラーを作り出した人気のイラストレーター、ダンシングスネイル。
彼女は自身初のエッセイ『怠けてるのではなく、充電中です。』(生田美保訳、CCCメディアハウス)の中で、なかなか消すことのできない無気力感や不安感と折り合いをつけながら、うまく生きていくための心のあり方を紹介している。
彼女自身、無気力症、うつ、不安症を患ってきたことから、その経験を振り返り、自分を苦しめている大きな原因となっていたのが、「自分が持っていないもの」ばかりに目がいってしまうことで生まれる「自分をもっとよくしなければ」というプレッシャーだったという。
自分は生まれ持ったものが少ないと感じて切なくなることがある。天才的な才能もなければ、生まれつきの美人でもない。そのうえ、愛くるしい人懐っこい性格に生まれたわけでもない。どこへ行っても自分にないものとそれを生まれ持った人たちにばかり目が行ってしまうので、何をしても満足できず、何ひとつうまくいかないような気分の繰り返しだった。私の人生はつねに二流、三流のまま終わってしまうような気がしてこわかった。私も何かひとつくらいは一番になりたいのに......。まさか忘れてはいないだろうねとばかりに、世の中は私がそういった特別なものを持たない人間であることを、ことあるごとに自覚させてくれた。そのたびに私は深みにはまり、回復するのに長い時間を要した。(『怠けてるのではなく、充電中です。』58ページより)
しかし、逆説的だが、「すべてが完璧でなければならない」という呪縛から解放されたときにこそ、「自信のない自分」から抜け出すことができるのだ。
肩の力が抜けたイラストと短編エッセイが40篇ほど収録された本書から、一部を抜粋し、2回にわたって掲載する。今回は第2回。
※第1回:無気力症だった韓国の人気イラストレーター「キラキラしたSNSを見ないで」はこちら
今日もただ存在できますように(51~53ページ)
いつだったか某心理研究所のセミナーを受けた後、内容を誤解していたのか、自分には習った通りにできそうもないと家に帰ってから落ちこんだことがある。布団の中でひとしきり泣いた後、講師の先生に助けを求めるメールを送った。これからほかにどんなセミナーを受けたら心が楽になれるかと聞いたら、こんな返事が返ってきた。
「自分は完璧じゃないからもっと改善しなくてはいけない、という心の存在に気づいてください。その心のままでは、どんな知識も自分を突き刺す武器になってしまうので」
その後しばらく、性格や心理的な問題を変化させるための努力をやめ、アドバイスやヒーリングのための文章も自分からは読まなかった。振り返ってみると、あの時間があったからこそ心の余裕を取り戻せたように思う。