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新型コロナパンデミックの原因は「人類が森林を破壊したからだ」

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2020年06月10日(水)18時05分
ニューズウィーク日本版編集部

NATIONAL GEOGRAPHIC/MICHAEL HAERTLEIN

<「チンパンジーの道具」を発見した86歳の霊長類学者が語る、野生生物保護と新型コロナ危機>

霊長類学者で野生生物保護活動家のジェーン・グドールの名前を聞くと、チンパンジーの保護活動が思い浮かぶ人も多いだろう。しかし、これまで60年にわたって彼女が取り組んできた活動は、それだけにとどまらない。

86歳の現在も、世界を変えたいという不屈の精神に突き動かされて、年間300日も世界中を飛び回っている。地域コミュニティーや若い世代、さらには環境保護運動で「悪者」扱いされることの多い石油会社も励ますことにより、その目標を達成することを目指している。

祖国イギリスを離れて、タンザニアのジャングルに向かったのは26歳の時。女性が1人でジャングルに入るべきではないと思われていた時代のことだ。

この最初の調査で、グドールは当時の常識を覆す発見をした。チンパンジーがアリを捕るために道具を使っていることを明らかにしたのだ。道具の使用は人間固有の能力だと、それまで思われていた。

4月には、彼女の活動を追った新作ドキュメンタリー番組『ジェーンのきぼう』が放映された。このドキュメンタリーについて、そして新型コロナウイルス危機について、ジャーナリストのキャスリーン・レリハンがグドールに聞いた。


――あなたは『ジェーンのきぼう』で、森林と野生生物を守るカギは地域コミュニティーに力を持たせることだと指摘している。

森林が外国企業によって破壊されてきたことは確かだが、問題はそれだけではない。人口が増加するのに伴い、地元の人々が農業のために、森林を切り開いている面もある。

真に貧しくて家族を養うのに必死な人は、最後の1本の木でも切り倒さざるを得ない。そこで、人々が環境を破壊せずに生きていける方法を提供することが重要になる。

――『ジェーンのきぼう』では、コンゴ共和国にチンパンジーの保護施設を造る際に石油会社と協力するに至った経緯についても語っている。なぜ、石油会社と協力すべきだと思うのか。

あらゆる石油会社と協力できるとは期待していない。そのとき協力したのは、コノコ社(現在のコノコフィリップス社)だった。コノコは、私が知っている中で最も環境に優しい石油会社だった。

コノコの資金を受け取るべきなのか。私は自分に問い掛けた。私は旅行に行くとき、石油会社の製品を利用する。自動車に乗るし、飛行機にも乗る。ホテルにも泊まる。石油会社が正しい行動を取ろうとしているのに、資金を受け取らないのは、矛盾した態度だと思った。それにより、石油会社がいくらか評判を高めるのを手伝うのは、悪いことではないと考えた。

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