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「9月入学」は教育グローバル化のチャンス そもそも日本が「4月入学」になった理由とは?

2020年05月26日(火)15時55分
船津徹

日本は海外の学生にとって魅力的な留学先

9月入学の導入は、遅れ気味であった日本の高等教育のグローバル化を加速させるチャンスでもあります。2019年の留学生受け入れ国ランキングを見ると「9月入学」を導入している中国は世界第4位の489,000人で、日本は第9位の208,901人でした。(Institute of International Education)

しばらく中国への留学生数が減ることが予想されますから、日本が受け入れ体制を整えることで、留学生を大きく増やすことができます。日本への留学を希望する若者は世界中にたくさんいます。筆者が運営するアメリカの塾にも日本の大学進学を希望する生徒が毎年いますが、受験や入学の時期がアメリカと異なるため断念するケースが多くありました。

極端な例ですが、アメリカの高校生は5月末〜6月初旬に卒業しますから、日本の大学を選択した場合、翌年の4月まで、1年近く入学を待たなければならないのです。(最近は日本の大学も秋入学の導入が増えているのでこの問題は解消されつつあります)

受験出願と入学のタイミングを世界標準に合わせれば、世界中の学生が日本の大学を目指しやすくなります。日本の大学の学費は、私立であっても欧米に比べると破格の安さであり、それだけでも留学生にとって十分に魅力的です。ちなみに2020年のアメリカの私立大学の年間学費の平均は4万1,426ドル(約440万円)で卒業までに学費だけで1,700万円以上かかるのです。

さらに日本の治安の良さ、清潔な環境、四季豊かな自然、各地域に残る食文化、伝統文化、職人文化などは世界に誇れる「強み」であり、世界中から優秀な学生を惹き付けるために十分過ぎる資産です。海外からの学生や教職員を増やし、キャンパスの多様性を高めることで、内なるグローバル化が実現できるのです。

4月入学と9月入学、どちらのメリットが大きいのか?

そもそもなぜ日本は「4月入学」になったのでしょうか?日本の学校教育制度は、明治5年にフランスを模倣して作られた「学制」と呼ばれる教育法令が始まりです。フランスがベースですから日本も元々は「9月入学」だったのです。

ではいつから4月入学になったのかと言えば、明治19年に3月を区切りとする「会計年度」を明治政府が導入したことに遡ります。学校は国家予算によって運営されていますから、自ずと4月スタートが定着したわけです。

北米やヨーロッパなど北半球の国々では夏休み明けの9月入学が主流です。ごく一例ですが、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、イタリア、ベルギー、ロシア、中国、香港、台湾は9月が新学年のスタートです。

なぜ9月なのかと言うと、その昔、ヨーロッパでは農作業の繁忙期が夏に集中していたからと言われています。子どもたちが農作業の手伝いから開放される9月に新しい学年がスタートし、再び忙しくなる初夏(5月〜6月)に学年が終わるというスケジュールが定着したわけです。

4月入学も9月入学も昔の社会事情が引き継がれてきただけであり、入学時期によって子どもたちの学びに何ら差が生じることはありません。つまりどちらでもいいのです。では肝心の子どもたちにとってどちらがメリットが大きいかと言えば「9月入学」です。

世界で主流の「9月入学」に足並みを揃えることで教育の内なるグローバル化が実現できることは述べました。また、進学や就職において海外の学校や外資系企業を視野に入れることが可能になり、子どもたちの人生選択の幅が広がります。さらに9月入学を導入することで子どもにとって「夏休みの意味」が大きく変わってくるのです。

【参考記事】コロナ休校による「学力ロス」を防ぐには?

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