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映画の登場人物の1人になれる 「没入型」のシークレット・シネマ

Disney Teams Up With Secret Cinema

2020年04月15日(水)15時10分
セーラ・アトキンソン(ロンドン大学キングズ・カレッジ教授)、ヘレン・ケネディ(ノッティンガム大学教授)

例えばネットフリックスと組んだドラマ『ストレンジャー・シングス』のハイライト場面の上映イべントでは4カ月にわたる開催期間中、ドラマの時代背景である80年代のファッションに身を包んだ参加者が最大1200人も結集。会場には地下に秘密基地のあるショッピングモールや登場人物の自宅など、ドラマの中で重要な意味を持つ場所が再現され、参加者は与えられたヒントを頼りに謎を解きながら会場内を移動。用意されたいくつものシナリオ展開に、どっぷり没入した。

18年夏に行われたバズ・ラーマン監督の『ロミオ+ジュリエット』のイマーシブ上映では、5000人の参加者がモンタギュー家とキャプレット家のメンバーに扮し、ロンドンの公園に再現された架空の町で派手な抗争を演じた。

17年に倉庫で行われた『ブレードランナー』のイマーシブ上映では、人工気象装置で降りしきる雨を再現。参加者は傘とレインコートを買って、人造人間と捜査官が死闘を繰り広げる世界を体験した。

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『ブレード ランナー』のイマーシブ上映では人工雨も降るリアルさ LUKE DYSON © SECRET CINEMA

こうしたイべントは多額の収益を生む。チケットの価格は体験レべルに応じて設定され、高額になるほどより深く映画の世界に入っていける。一番手頃な価格で49ポンド、VIP並み体験で175ポンド程度だ。

生身でドラマを体験

会場に入ってからも衣装を買ったり、映画にちなんだ料理やドリンク、グッズを買ったりと、参加者がお金を使う機会は多い。 16年にイマーシブ上映されたSFホラー『28日後...』では、参加者全員に医療用スクラブ(白衣)を着用してくるようにとの指示があった。従わなかった人たちは、武装警官に扮したスタッフに促され売店に並んで買うことになった。

この手のビジネスはディズニーのお家芸だ。ディズニーはそもそも事業の収益化が巧み。1930年代にミッキーマウスの商品化に成功すると、70年代にはディズニーワールドがその名のとおりディズニーの世界に入り込める体験型リゾートとして人気を博すようになった。

今回の提携については上映作品のタイトルなど詳細な内 容は分かっていないが、これを機に映画会社が続々とイマーシブ上映専用の新作づくりに乗り出すとみていい。

そうなればイマーシブ上映はますます大掛かりでスリリングなイべントになる。VRなどの技術を活用すれば、スクリーンの世界と現実の世界の境界を軽々と飛び越えることも夢ではない。

映画はただ椅子に座って「鑑賞する」ものではなく、登場人物の1人になって「体験する」ものになるだろう。今後もシークレット・シネマは斬新なアイデアでファンを楽しませてくれるはずだ。


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[2020年3月31日号掲載]

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