「きょうだい平等」の精神は上の子にとって不平等
上の子にとって下の子の存在は「親の愛情を奪い合うライバル」 Tom-N-iStock
<仲の良いきょうだいに育てたいのなら、平等に育てる必要はありません。はっきり区別して育てましょう。平等に愛情を注ぐのでなく、その時に一番愛情を必要としている方に集中的に与えることがポイントです>
新型コロナの感染拡大によって、たくさんの子どもたちが自宅待機を余儀なくされています。「家にこもってばかりで外で遊べる環境がないと、きょうだいゲンカが増えて大変!」という悲鳴があちこちの家庭から聞こえてきます。
ほとんどの親は「きょうだいは平等に育てるべきだ」と思っているでしょう。ところが「きょうだい平等の精神」こそが、ケンカの絶えない、仲の悪いきょうだいに育ててしまう一番の原因なのです。
「きょうだい平等の精神」は、上の子にとって受け入れ難い不平等です。なぜなら上の子は生まれてきた時は一人っ子だったからです。親の愛情は自分一人で100%独占するのが当たり前という前提で生まれてきたのです。
下の子ができた途端に「弟(妹)ができたから、これからはきょうだいで愛情を50%ずつ平等に分けます」と言われても納得できるものではありません。もちろん親はそんな言い方はしないでしょうが、上の子はそう感じるのです。
親の愛情が100%から50%へと一気に減額されてしまった上の子は「親から愛されている」という自信がガラガラと崩れ落ちていくのを感じるのです。
赤ちゃん返りは愛情を取り戻すための手段
生まれてきた赤ちゃんがママの胸でおっぱいを飲んでいる姿を目にした時、上の子は「大好きなママが取られた!」と強いジェラシーを感じます。同時に「ママの愛情を取り戻さなければならない!」と必死で考えます。そして「自分も赤ちゃんになればいいんだ!」という素晴らしいアイデアを思いつくのです。
下の子が生まれると、上の子に指しゃぶり、おもらし、夜泣き、親へのまとわりつき、グズりなどの赤ちゃん返りが起こりますが、これらは全て親の愛情を取り戻すための行動です。上の子にとって下の子の存在は「親の愛情を奪い合うライバル」なのです。
親の愛情を取り戻すために「良い事」をしてくれれば楽なのですが、ほとんどの子どもは赤ちゃん返りをして親を困らせます。もちろん本人は悪い事をしているという意識はなく、ただ親の関心を自分へ引き寄せたい一心です。
この時、上の子の寂しい気持ちを理解せず「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから面倒かけないで!」と突き放してしまうと、上の子の自信は喪失し、その反動で、母子分離ができなくなったり、環境の変化を過剰に怖がるという臆病な性格が形成されることがあります。