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世界一過保護な国アメリカでは、日本の親は全員ネグレクト

2020年03月03日(火)16時10分
船津徹

日本では「心理的虐待」が増えている

日本でも子どもの虐待が増加しています。2018年の厚生労働省のデータを見ると、日本全国の児童相談所へ寄せられた児童虐待相談件数は15万9850件と、前年度から20%近く増えており、過去最多となっています。

虐待の内訳は、心理的虐待が全体の55%を占め、次いで身体的虐待が25%、ネグレクトが18.4%、性的虐待が1.1%となっています。前年と比べて全ての件数が増加しましたが、特に心理的虐待と身体的虐待の増加率が顕著です。

虐待対策として2020年4月から親の子どもへの体罰を禁止する「改正児童虐待防止法」が施行されます。ただ日本で最も多く発生している「心理的虐待」についての細かい規定が見当たりません。実際には、言葉や態度による暴力=心理的虐待は、体罰以上に子どもの脳や精神の発達に深刻な影響を与えます。

「本当にダメだね!」「お前はバカだね!」「あんたなんか産まなければ良かった」「どっか行っちゃえ!」「ゴミッ!」など、親から人格を否定されたり、自尊心を傷つけられる言葉を定期的にかけられて育った子どもは、聴覚に障害が生じる他、知能や理解力の発達にも悪影響が生じることが報告されています。

また威圧的な言葉で脅したり、拒否的な態度をとったり、きょうだいを差別したり、子どもが家庭内暴力を目撃することも心理的虐待であり、子どもの心に深刻な後遺症を残す原因になります。

福井大学とハーバード大学は、夫婦間の身体的暴力を目の当たりにしてきた人と、言葉の暴力に接してきた人の脳をMRIで調べました。その結果、身体的暴力を見てきた人は脳の萎縮率が3.2%だったのに対して、言葉の暴力は19.8%と6倍も高いことが分かりました。言葉の暴力は、身体の表面には傷をつけませんが、脳や心に傷をつけてしまうのです。

虐待としつけの境界線

子どものしつけにうるさい日本では、虐待としつけの境界線がグレーです。しつけ目的であれば、多少の体罰や暴言は許されるという社会的風潮があるのではないでしょうか。親は子どものためと思っていても、過剰な教育や厳しいしつけによって子どもの心身の発達が阻害されるのであれば、それは虐待です。

しつけは子どもが「自分の意思で」行動や感情をコントロールする方法を伝えるものです。子どもを力で押さえつけたり、言葉で威圧して従わせることは、しつけでなく「虐待」なのです。日本の親は子どもを自分の所有物のように扱う傾向がありますが、幼い子どもであっても「一人の独立した人格として尊重する」という基本を忘れてはいけません。

子どもが言うことを聞かないと困っている方は、親子の信頼関係を取り戻すことに目を向けてください。親を100%信用していれば、子どもは親の言葉に耳を傾けますし、しつけも受け入れてくれるのです。

親子の信頼関係を強固にする一番の方法はスキンシップです。抱っこしたり、添い寝したり、肩や背中を撫でたり、手足をマッサージするなどスキンシップを増やすことで、親子関係は目に見えて改善します。その上でしつけを伝えれば、子どもは聞く耳を持ってくれます。

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