最新記事

ファッション

苦労人シャネルと生まれながらの貴族のライバル、そして戦争

Chanel and Schiaparelli: Rivalry on the Riviera

2020年03月02日(月)18時30分
ニューズウィーク日本版編集部

AndreaAstes-iStock

<第2次大戦前夜のフランス社交界で出会ったスキャパレリとの競い合いが唯一無二のデザイナーを生み出した>

「5番」という名の香水で知られ、ファッションの世界に輝く巨星ココ・シャネル。第二次大戦の足音が近づく1930年代にも、彼女は南仏リビエラの社交界の華だった。そして自分より少し若い女性デザイナーのエルザ・スキャパレリと、激しく競い合ってもいた。

イギリスの社会史家アン・ド・コルシーは新著『シャネルのリビエラ──その魅惑と退廃、平和と戦争の中でのサバイバル(Chanelʼs Riviera: Glamour, Decadence and Survival in Peace and War )』で、シャネルの台頭とライバルとの華やかな競争を、戦争の気配に怯えるヨーロッパの闇と対比して描いた。以下はその抜粋。

*

1932年当時、ガブリエル・ボヌール(ココ)・シャネルは誰よりも有名だった。しかしシャネルの王座を脅かす個性的なライバルが台頭していた。彼女の名はエルザ・スキャパレリ。価値観も生まれも育ちもシャネルとは正反対で、当時の前衛的な芸術家 たちに囲まれていた。

相反する2人の視点は、それぞれの強みを発揮する方向に働いた。シャネルは、女性が服を着るのであって、服は主役ではないと信じていた。 一方、スキャパレリにとっての服は芸術。いい例が、サルバドール・ダリとコラボした「ロブスター・ドレス」だ。

NW_CCS_02.jpg

ロブスター・ドレス GIFT OF MME ELSA SCHIAPARELLI

シャネルはルックスも魅力的で、官能的かつ両性具有的で、シックだった。ショートヘアと細い体は、彼女の服の控えめな優雅さを引き立てた。有名な男たちと親密に交際してもいた。

何もかも対照的な2人

シャネルとそのシンプルなスタイルはブランドとなり、自身がその生きた広告塔だった。「私にとってシンプルであることは、本物の優雅さの基調だ」と言っていた。

既にシャネルは、代表作の1つであるリトル・ブラック・ドレスを発表していた。ある晩、劇場で非常に手の込んだ服を着た女性を見たシャネルは「あんなの長くは続かない」と言った。「私がみんなに着せるドレスはシンプルで、しかも黒なの」

NW_CCS_08.jpg

リトル・ブラック・ドレス ILLUSTRATION BY CONDE NAST/GETTY IMAGES

それまで黒は喪服限定の色だった。だからシャネルは新しいアイデアを持ち込んだだけでなく、社会的タブーを破ったことになる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾総統、太平洋3カ国訪問へ 米立ち寄り先の詳細は

ワールド

IAEA理事会、イランに協力改善求める決議採択

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 5

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...…

  • 4

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 5

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること