教育は成功、でも子育ては失敗! 親の仕事は教育ではなく「心を育てる」ことです
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<親と教育者が「子育て」と「教育」を混同して、お互いがお互いの領域に干渉し、責任のなすり合いをしていたら子どもはどうなる......>
レストランで子どもが走り回っています。「お店の人に怒られるよ!」「怖いおばさん(おじさん)に怒られるよ」と、子どもを諭す母親の姿をよく見かけます。でも、レストランで働いている人や食事中の(怖い)おばさんの仕事は子どもを怒ることではありません。
ハワイにある筆者の学校にも「親が言っても聞かないので先生から厳しく叱ってください!」と懇願してくる親が少なからずいます。しかし私たちの仕事は生徒を厳しく叱ることではなく、世界で通用するバイリンガルを育てることです。
今の社会は、親も教育者も「子育て」と「教育」を混同していて、お互いがお互いの領域に干渉し、責任のなすり合いをしているように見えます。間に挟まれた子どもは「誰を信じてついていけばいいのか」分からなくなり、やがて子どもも「自分がこうなったのは◯◯のせいだ」と責任転嫁するようになります。
子育ての目的は心育て
まず「子育て」の目的は「心を育てること」です。そして責任者は「親」です。ここで言う「心」とは、自己や他者(社会)に対して自然に抱く気持ちのことで、人柄や人格形成の土台となるものです。良い子育てとは、自己や他者に対して「肯定感」を持てるように育てることであり、悪い子育てとは、自己や他者に対して「否定感・不信感」を植えつけてしまうことです。
子育ては「自分は親から愛され受け入れられている」という、あるがままの自己への自信を育てることから始まります。親がたっぷり愛情を伝え、甘えさせ、かわいがってあげると、子どもは「自分は親から受け入れられている」という受容感情を持つことができます。すると親以外の他者に対しても受容的、肯定的、開放的な性格に育っていくのです。
乳幼児期に親の愛情を十分に実感できないと「だれもボクを愛してくれない。だれも助けてくれない。この世は不安だらけだ」という不信感が心に根付いてしまいます。すると人生に対する姿勢が防御的になり、他者に対しても警戒的、攻撃的な性格に育つ可能性が高くなるのです。
親子の信頼関係が確立すると、子どもは親の言葉を聞くようになり「しつけ」も受け入れてくれるようになります。「親の言うことを聞かない!」と困っている方は、子どもに愛情を伝えて信頼関係を取り戻せば良いのです。怖いおばさんや学校の先生に頼んでも、親子間の問題は解決しません。
子どもに愛情を伝える一番の方法がスキンシップです。親の皮膚と子どもの皮膚との「心地よい接触」が愛情のインプットには最も効果的です。抱っこしたり、一緒にお風呂に入ったり、添い寝をしたり、たっぷり甘えさせてあげると子どもは心の底から安心できるのです。幼い子どもと密接な皮膚接触ができるのは親だけです。学校の先生がそんなことをしたらセクラハになってしまいます。だから子育ての責任者は「親」なのです。
【参考記事】中学受験は子どものため? それとも親のため?