遺体を堆肥化する「エコロジカル埋葬」 土葬も火葬もしない第3の方法とは?
スウェーデンから世界へ広がる
「プロメッション」は、スウェーデンのプロメッサ・オーガニック社 が考案した。同社を設立したのは、生物学を学び、企業に勤務したのち、有機野菜栽培で起業したスーザン・ウィーグ-メサクさんだ。設立は2001年7月。筆者は10年前に初めて同社について知り、以来、何度か記事を書いた。ウィーグ-メサクさんに会って話を聞いたり、スカイプで話したりした。
ウィーグ・メサクさんは、地域で、オーガニックコンポストの作り方を指導する活動もしていた。「自分が亡くなったら体を肥料にできるはずだ」という思いが「プロメッション」開発のきっかけだった。埋葬方法も環境汚染の一因だし、エコロジカルな方法が見つかれば環境負担を減らせるとも思った。
そして、自然死した豚を使って実験を始めた。豚の体の組織は人体にとても近いため、遺体のフリーズドライ化の見込みが立てやすい。豚の数は100匹にまで達し、フリーズドライを埋葬法として確立できるという結論に至った。
第1号開業までの長い道のり
「プロメッション」は、まだ実用化されていない。地元のスウェーデンで2010年に最初の施設をオープンできるかもしれなかったが、実現しなかった。いまは、スペインのメンバー(プロメッサ・スペイン社)が精力的に活動しているスペインで、またはドイツで最初の施設をオープンできるかもしれないとのことだ。実現に時間がかかっているのは、やはり、各国で「プロメッション」が現行の法に適合しないからだ。
しかし、ウィーグ・メサクさんは悲観していない。「起業して以来、プロメッサに関心があるという声が世界中から届いています。でも、急いで第1号をオープンするよりも、葬儀関係者を含めて、より多くの人たちに、プロメッションは土、水、大気を汚染しない本当に環境に害のない解決策だと知ってもらうほうが大事だと思うようになりました。遺体は、生物学に基づいて、ハイテクノロジーを使って、自然への贈り物にすることができるのです」
その言葉通り、同社では世界で独自の研修を進めていて、正式なメンバーが徐々に増え、アメリカでも5人になったというわけだ。アメリカでの第1号は、カンザス州になるかもしれないとウィーグ・メサクさんは見ている。
昨秋発表された全米葬儀業者協会(NFDA)の調査によると、回答者の半数以上(51.6%)が、環境負荷や費用を減らせることからグリーン葬儀という選択肢に興味をもっている。世論の動向によっては、環境先進国が多いヨーロッパよりも先に、アメリカで「プロメッション」が実用化することもあり得るかもしれない。
なお、プロメッサ・オーガニックでは、無記名登録で「プロメッション」に賛同する人を募っている。2020年初めの時点で、世界に4600人以上の登録者がいる。