犬でも猫でもげっ歯類でもOK ペットのフリーズドライを請け負う業者を訪ねた
Freeze-Dried Pets Are Forever
悲しみに寄り添う仕事
バウザー夫妻が到着したときの様子を見れば、それは明らかだった。
ハトを取り出す手品師のように、華々しい披露が行われ るのかと思ったら、実際は淡々としたものだった。工房のドアは普通に開いていて、戸口にキースが立っていた。視線はテーブルの上に置かれたチャンスに注がれている。「すごい」と、キースは言った。「チャンスがいる」
でも妻のエイプリルは、戸口に足をかけた途端に回れ右をした。「だめ」と彼女は言った。「無理よ」。ドアが閉まった。
「そう、あれがチャンスですよ」と、ルパートは言った。「かわいくなったでしょう?」
キースはチャンスにそっと近づき、さまざまな角度から眺めてから体に触れた。エイプリルもようやく中に入ってきたが、最初はチャンスを直視できなかった。
「泣かないで」とルパートは言い、エイプリルの肩を優しくたたいた。「あなたが泣きだしたら私も泣いてしまう」
「いい仕事をしてくださって」と、エイプリルは言った。「悪い仕上がりを期待していた部分もあったんだけど」
チャンスのフリーズドライ化については、夫婦の間で温度差があったのだという。もしエイプリルがひどく悲しい気分になるようなら、クロゼットにしまい込んで出さないことで2人は合意していた。
キースは片方の腕でチャンスを大事そうに抱えてこう言った。「私が死んだら棺桶にはこの子を入れるって、いつも言っているんだ。どこに行くにも一緒だったからね」
エイプリルはキースを見て言った。「この子を連れて行けるのは、先に(天国に)行ったほうよ」
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[2019年12月10日号掲載]