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カニバリズム

人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶりに故郷の村へ

2019年11月05日(火)17時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

写真はイメージ USO-iStock

<カニバリズムの風習のある村に生まれ、「食べられる」恐怖に遭遇した少年。青年になり何を思うのか>

ニューギニア島の西半分を占めるインドネシアのパプア州で、6歳の時に集落の掟(おきて)により死刑を宣告された20歳の青年、ワワ・チョンボンガイ君。カニバリズム(人肉食)の風習が残るとされるその集落を抜け出してから、14年ぶりに故郷の土を踏んだ。7NEWS、オーストラリアのメディア「news.com.au」 など複数メディアが報じた。

コロワイ族(Korowai)が住む集落で生まれた彼の人生を変えたきっかけは、両親の急死だ。「肉親の突然の死は呪いによるもの」と信じる集落の人々は、6歳のワワ君が「悪魔」であると確信し、彼に死刑を宣告した。

(右が大人になったワワ君)


集落での死刑は、おそらく人肉食の犠牲になることを意味する。コロワイ族の間には、「悪霊に宿られた者の肉を食することで、悪霊を退治できる」という言い伝えがあるためだ。

人肉食の被害者になっていた可能性もあるワワ君。たまたまテレビ局のガイドとして現地を訪れていたコルネリウス・スンビリンさんが彼を集落から連れ出したため、窮地を脱することができた。

しかし彼とともに悪魔と決めつけられた弟のデビ君の行方はいまだに分かっていないという。

意を決して帰郷した彼を待ち受けていたのは...

ワワ君はその後、コルネリウスさんの家族とともにスマトラ島で育てられ、大学でスポーツ学を専攻する青年に成長。そして、二十歳を迎えたことを機に再び故郷を訪れる決意を固めた。

14年ぶりに帰郷した集落では、かつて6歳の少年に悪魔の烙印(らくいん)を押した過去は遠くに追いやられ、親族一同がもろ手を挙げてワワ君を歓迎。彼も血縁の人々との再会に心から感動し、再び故郷に戻ってくるとの誓いとともに、集落を後にした。

カニバリズムはすでに死に絶えた風習とされているが、ワワ君を育てたコルネリウスさんは「まだ残ってるはず」と話す。ワワ君も、生まれ故郷の忌まわしき慣習について、集落の人に「もう殺し合いは止めよう。ともに肩を寄せ合って生活することが最も重要なことだ」と呼び掛け、自分のように近代的な教育を受けることが「健全な社会生活を送る上での礎となる」と訴えたという。

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