「ザ・マン」と呼ばれる女子プロスター、ベッキー・リンチが語るキャリアのこと
No More Dancing Leprechaun
今年6月にカリフォルニアで開催された「2019 MTV Movie & TV Awards」の会場に姿を見せたリンチ Mike Blake-REUTERS
<性別の違いを超越した「ザ・マン」と呼ばれるリンチの下積み時代と後に続く女子レスラーへのメッセージ>
世界最大のプロレス団体WWE(ワールド・レスリング・エ ンターテインメント)の下部組織、NXTはレスラーたちの優れたパフォーマンスとネット特番『テイクオーバー』の面白さを武器に短期間で知名度を上げた。9月からはついに有料放送USAネットワークで全米向けライブ中継に移行している。
プロレス関係者は、この移行を興味津々で見つめている。WWEの主力ブランド、『ロウ』の大会での現女子世界王者であり、かつてNXTのスーパースターだったベッキー・リンチもその1人だ。
「すごく大きな動き。これからどうなるか、とても興味がある」と、性別を超越した存在というニュアンスを込めて「ザ・マン」と呼ばれるリンチは本誌に語った。「小さな会場で40~50人の観客を前にやってたときから、ここまでの成長は本当にすごい。ブルックリンで最初の大きな『テイクオーバー』があって、次はブランド独自のテレビ契約。可能性は無限大よ」
自分がNXTにいた時代から、大きな成長の可能性を秘めた特別な何かを作っているという実感があったという。
WWEの2大ブランド『ロウ』と『スマックダウン』とそのテレビ放送を支えるスターの多くはNXT昇格組だ。セス・ロリンズ、ブレイ・ワイアット、フィン・ベイラー、シャーロット・フレアー......。だがNXTが生んだ最大のスターといえば、やはり「ザ・マン」だろう。
そのキャリアは必ずしも平坦な道のりではなかった。13年、アイルランド出身のリンチがNXTにデビューした時点では、お気楽なダンス好きの妖精風キャラ設定だった。後にWWE最大のイベント『レッスルマニア』のメインを張る女子レスラーとしては最高の出発ではないが、リンチは後悔していない。「確かにNXTのデビューは色物キャラだったけど、そこから自分を変えて、成長し続けてきた。観客の前でひどい負けも経験した。それでも私はそんな自分を脱ぎ捨て、再び立ち上がる。後悔なんかしていられない」
成長させてくれた舞台
NXT時代の2年間はミスや失敗もあったが、このときの苦労が結果的に「ザ・マン」の下地になった。
「デビュー当時は自信を失っていた。何度も解雇寸前まで行って、いつも仕事のことを心配していた」とリンチは言う。「でも、心の奥では自分に言い聞かせていた。私はすごいことができる、チャンスが来たら絶対に 逃がしちゃダメだって。だから今から(NXT時代を)振り返って、自分の役に立ったなって愛情を込めて言える。私に『負けるもんか』と思わせて、たくさんの力を与えてくれた」