出演者自身が出世作をパロディーにした『ビバヒル』リブート版はコミカルだけど切ない
A Comical, But Melancholy Reboot
リブート版のキャストは、いわば「自分で自分を演じる」ことになった Mario Anzuoni-REUTERS
<90年代を駆け抜けた『ビバリーヒルズ青春白書』。学園ドラマの金字塔が趣向を凝らして帰ってきたが...>
90年に放映が始まった『ビバ リーヒルズ青春白書』(通称『ビバヒル』、シーズン3までは『高校白書』)は、画期的なテレ ビドラマだった。格差やドラッグなどの社会問題を扱いながら、若者8人の恋と友情のもつれを大真面目に描いた。
自殺や犯罪、癌の恐怖といったテーマと、高校生の初体験や略奪愛などのエピソードが同じ比重で取り上げられた。ドタバタコメディーになりがちだった青春物を大人向け顔負けの作品に仕立て、新時代の若者ドラマを確立した。
今年8月7日、伝説のドラマが『BH90210』として帰ってきた(「90210」はビバリーヒルズの郵便番号)。キャストが自分自身を演じるという趣向だけについて言うならば、『BH90210』は素晴らしい。初回では、中年になった主演キャストがファンの集いで再集結し、すったもんだの末にリブート版の制作を決める。
出演者たちが自分と出世作をパロディーにするというのだから、期待は高まる。お堅い美少女ドナ役のトリ・スペリングが今回演じるのは......トリ・スペリング。実生活でも子だくさんの彼女は、6人の子供を持つ落ち目の女優という設定だ。
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かつてブレンダを演じたシャネン・ドハティーは実生活と同じく、ドラマでも共演者と疎遠になっている。オリジナル版でデビッドに扮したブライアン・オースティン・グリーンは人気歌手と結婚し、主夫業に励んでいる(グリーンの実の妻は有名女優のミーガン・フォックス)。
俳優たちの「分身」ともいえるリアルなキャラクターが、人間模様を再現していく。男子の憧れの的ケリーを演じたジェニー・ガースは、ブランドン役のジェイソン・プリーストリーとベッドイン。ケリーとブランドンの恋にときめいたファンは大喜びだろう。優等生のアンドレアには、昔から同性愛疑惑があった。演じるガブリエル・カーテリスは今回、自分の性的指向を確かめようとする設定だ。
オリジナル版の大ファンだった筆者は、目も当てられない失敗作になるのではとハラハラしながら第2話まで見たが、そうひどくはなかった。ひどくはないが、素晴らしくもない。大して笑えないし、切れ味もよくない。視聴者がキャストの近況を知っているという前提で作られた点には、いささか傲慢さも感じられる。
出演者は自分をネタに笑いを誘うが、中途半端なパロディーにしかなっていない。例えば実生活でもテレビ制作に関わるプリーストリーは、必死でディレクターの地位にしがみつく。だがそもそも彼に才能があるのかどうかを、ドラマは説明しない。