NYでノンアルコールバーが生まれる理由
ニューヨーク初のノンアルコール・バー「Getaway」 (c) Kasumi Abe
<ニューヨーク初のノンアルコール・バーがオープン。アルコールをめぐって、その背景にある事情とは......>
NY初ノンアルコールバーが人気
ニューヨーク・ブルックリンで、Getaway(ゲッタウェイ)という、ニューヨーク初のノンアルコール・バーがオープンし注目を集めている。
アルコール類を置いていないバーとは言え、ビールくらいは置いているだろうにと思いきや、アルコール飲料「ゼロ」という徹底ぶり。バーなのになぜアルコールを置いていないのか? その理由を共同オーナーのサム・トニスさんに聞いた。
ノンアルコール・バー(英語圏ではソーバー・バーとも呼ばれる)は、カリフォルニア州やテキサス州、国外ではロンドンなどにすでにあるという。またニューヨーク市内では、月に1度のイベントとしてスペースの一部をノンアルコール形態にする店もあるそうだ。しかし常設のフルタイム・ノンアルコール・バーは、Getawayが市内初だ。そこで、「誰もまだやっていない店をオープンしたかった」と、サムさん。アルコールを置かないもう一つの理由として、サムさんの兄の経験がきっかけになった。
「以前兄がドラッグ中毒の問題を抱え、AAプログラム(アルコール依存者のためのプログラム)に参加しました。このプログラムに参加するとドラッグだけでなく、すべての悪しき習慣を断つことがゴールになります。兄は成功し、4年前にお酒もスッキリやめることができました。そんな兄を見ていて思ったのは、断酒した人や下戸の人も気の置けない友人らと出かけて、夜を楽しみたいのだということでした」。しかしそのような場には大抵酔っ払いがいたりと、決して健康的と呼べるような雰囲気ではない。これがGetawayを作るもう一つのきっかけになったという。
Getawayに集うのは下戸や断酒成功者だけではない。妊娠中や授乳中の女性、マラソンをする人、ダイエット中の人、宗教的に飲めない人、アルコールなしでデートを楽しみたい人、ただ禁酒を試したい好奇心の強い人なども、夜な夜なGetawayのドアを開く。
アルコール依存症はれっきとした病気
Getaway人気の背景には、アメリカで飲まない(もしくは節酒中の)若者が増えていることがある。親世代を反面教師として自分は酒に溺れたくないという考えなのだ。
アメリカでは、アルコール依存症や中毒者に対する世間の目は、ドラッグ中毒者同様に厳しい。かつては、断酒したことや禁酒中であることを公言するのは勇気がいることだった。なぜなら「自分はアルコール問題を抱えていた」と、恥ずべき生活習慣を告白することになるからだ。