最新記事

テクノロジー

まばたきでズームするスマートコンタクト 米で試作に成功

Blink Twice and Zoom

2019年08月22日(木)18時50分
アリストス・ジョージャウ

まばたきだけで見え方を操作できる日がやって来る?(写真はイメージ) mediaphotos-iStock

<レンズを変形させて「見え方」をコントロールする>

カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが、まばたきで焦点距離を調整できるソフトコンタクトレンズの試作に成功した。

機能性素材の開発に関する専 門誌「アドバンスト・ファンク ショナル・マテリアルズ」に発表された論文によると、彼らは目の動きによって生じる微弱な電気信号(眼電図)に注目し、これを用いてコンタクトレンズの厚みを変化させ、焦点距離を切り替える装置を開発した。

英誌ニュー・サイエンティストの解説記事によれば、このレンズは複数層から成るポリマー(高分子化合物)でできていて、電流が流れると膨張し、切れると収縮する。

実験では被験者の目の周囲に5つの電極を貼り付け、眼球運動やまばたきによって眼球の前後に生じる電位差を測定した。そしてまばたき2回で「ズームイン/ズームアウト」が切り替わるように装置を設定した。

【参考記事】中国警察がロボコップ化! 「顔認証グラス」は犯罪者も誤魔化せない

現状はまだ実験段階なので、実用化までには多くの課題をクリアする必要がある。例えば電極の品質だ。論文によれば、「今回の実験で肌に貼り付けたのは市販の電極で、伸縮性に欠けていた。先行する研究からは、生体信号の検知・処理には柔軟で伸縮性のある電極が適していることが知られている」。

ほかに、レンズの連続的な動きを制御できない、予想外の動きに自動で対処できないなどの課題も指摘されている。

これらの問題を解決できれば、新たな視力補助ツールや人工眼球の開発につながるだろうと研究チームは期待を寄せる。論文の筆頭著者である蔡盛強はニュー・サイエンティスト誌に、「視力が失われても、眼球を動かして電気信号を送れる人はたくさんいる」と語っている。

この技術、遠隔操作のロボットにも応用できそうだ。例えば、操作する人が眼球を動かすだけでロボットの目(カメラ)の向きを変え、まばたき1つでズームとワイドを切り替えるとか。ただ、多くの新技術のように、物騒な兵器に転用されるのはごめんだが。

【参考記事】ロシアの新兵器は、敵の視力を奪い嘔吐させる
【参考記事】ロシア、兵士や戦車を隠す「透明マント」を開発


20190827issue_cover200.jpg
※8月27日号(8月20日発売)は、「香港の出口」特集。終わりの見えないデモと警察の「暴力」――「中国軍介入」以外の結末はないのか。香港版天安門事件となる可能性から、武力鎮圧となったらその後に起こること、習近平直属・武装警察部隊の正体まで。また、デモ隊は暴徒なのか英雄なのかを、デモ現場のルポから描きます。

[2019年8月27日号掲載]

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック上昇、トランプ関税

ワールド

USTR、一部の国に対する一律関税案策定 20%下

ビジネス

米自動車販売、第1四半期は増加 トランプ関税控えS

ビジネス

NY外為市場=円が上昇、米「相互関税」への警戒で安
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    『リーン・イン』を期待された高学歴女性「ヒーブ」…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…

  • 3

    「日本のハイジ」を通しスイスという国が受容されて…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:引きこもるアメリカ

特集:引きこもるアメリカ

2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?