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女子W杯

「私たちの名前さえ知らない祖国のために戦う」ドイツ女子サッカーチーム

2019年06月05日(水)18時00分
モーゲンスタン陽子

「私の名前知ってる?」ドイツ女子サッカーナショナルチームのプロモビデオ

<あのドイツでも、女子サッカーの認知はそれほどでもないようだ。「私の名前知ってる?」と問いただすPRビデオが話題に>

サッカーのFIFA 女子ワールドカップ 2019年大会が6月7日より7月7日までフランスにて開催される。日本代表チームは「なでしこジャパン」として国内外で比較的その活躍を知られているが、西洋圏では、チームスポーツにおける女子の人気は残念ながらそれほど高くない。カナダでは今年、国民的競技アイスホッケーの女子プロリーグが廃止されてしまった。

しかし、今年の女子サッカーは少し様子が違うようだ。先日、ドイツのナショナルチームが発表したイメージビデオは「女性として非常に強力なメッセージを発信している」として、ドイツ語圏以外でも大好評を博した。また、イングランドは史上初のオール・プロフェッショナルの代表チームをフランスに送り込む予定だ。

「私たちの名さえ知らぬ祖国のために」

ドイツの女子サッカーナショナルチームのプロモビデオは、「私の名前知ってる?」「私は?」という選手たちの問いかけで始まる。「知らないでしょ」と、コワモテで問いただす選手たち。

ロングバージョンは次ページで

「私たちは、私たちの名前さえ知らない祖国のために戦う」「私たちはこれまでに8回もヨーロッパのチャンピオンになっている」というメッセージには、男子以上の活躍をしながらも国や国民から興味を持たれず、正当な評価もされない女子選手たちの憤りが込められている。「最初にヨーロッパのトップに立ったときは、賞品はコーヒー(ティー)カップのセットだった」

「当初から、私たちは対戦相手とだけ戦っているのではない」とビデオは続く。彼女たちは「見ていて恥ずかしい」「退屈」「アマチュア」「動き遅すぎ」などの悪意ある偏見の声とも戦わなければならなかった。女は家庭に引っ込んで、赤ん坊を育てろという声だ。でも、「私たちにタマ(睾丸)はいらない」と言う(英語字幕では「タマはない」となっている)。そして、私たちの顔を知らなくてもいい、ただ私たちのやりたいことは理解するべきだ、それは、プレイをすることだ、と、サッカーへの純粋な情熱を語る。

スタイリッシュでクールなこのビデオは、SNSのみならず英紙ガーディアンなどでも絶賛された。

サッカーの未来は女子に?

一方、イングランドは今年初めて、プロリーグで活躍する選手のみで構成されるオール・プロフェッショナルのチームをフランスに送り込む。ステフ・ホートン(マンチェスター)やルーシー・ブロンド(リヨン)などのスター選手たちは、コーチや体調管理の専門家などを引き連れて、万全の体制でフランスに乗り込む。これまでは、パートタイムの選手も多かった。

ガーディアンによると、女子サッカーの人気は近年急激に上がっているようだ。2017年、女子サッカーヨーロッパ杯準決勝のイングランド対オランダ戦は、イギリスのみで4百万人もの視聴者を惹きつけた。2018年の女子FAカップ決勝では、チェルシーとアーセナルの試合で過去最高の4万5千人以上が観戦した。

女子サッカーは第一次世界大戦中にイギリスで人気を博し、時に5万人もの観衆を呼び込んだといわれているが、1921年にイングランドのサッカー協会会員クラブの投票が行われると、 1971 年までの長きに渡って、正式なプロ競技から排除されることとなる。

米代表チームは男性と平等な待遇を求め提訴

観客数の急増からも、女子サッカーの未来は大きいと期待される。しかしながら、あるFIFA幹部が「(より多くの観客を惹きつけるために)かわいい選手はさらにピッチリしたショートパンツを身につけるべきだ」などの発言をし、ひんしゅくをかった。いくら人気が出ても、女子選手はまだまだ性的な偏見にさらされていると言える。

今年3月には、アメリカの女子サッカーナショナルチームの28人の代表選手が、米国サッカー連盟による賃金や待遇面などでの性差別に対し、訴訟を起こしている。アメリカの女子代表チームはワールドカップで3度の優勝経験を持ち、入賞経験しかない男子代表よりはるかに優秀な成績を収めてきている。

今年のFIFA 女子ワールドカップでは、いつになく強い女子選手たちの姿が見られそうだ。

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