権力者のセクハラ発言にどう応じる? グラミー賞ノミネートのティファニー・ハディッシュからの助言
37歳でブレイク、いまや破竹の勢いのティファニー・ハディッシュ ©Jason LaVeris-Getty Images
<アメリカを代表する人気コメディエンヌはこれまで不当なセクハラにどう対応してきたのか。女性が仕事で突き当たる壁や男性との壮絶な体験がつづられた彼女の自伝が今年度のグラミー賞にノミネートされた>
2019年早々、女性に対するセクハラ、パワハラのニュースが後を絶たない。アイドルグループNGT48のメンバー、山口真帆さんが暴漢の被害に遭った事件については、新たなセクハラ被害者まで生んでしまった。某ワイドショー番組で事件について意見を述べる女性タレントに対して、お笑い界の重鎮があたかも枕営業を想起させるようなコメントで茶化したからだ。
権力者によるセクハラ発言があったときにどうすればよいか? アメリカのコメディー界のいまを代表するコメディエンヌで女優のティファニー・ハディッシュのケースを紹介しよう。
児童養護施設を転々、いじめられないための武器が笑い
ティファニー・ハディッシュは黒人女性4人組によるガールズ・トーク炸裂のコメディー映画『ガールズ・トリップ』への出演をきっかけに、2017年、37歳で大ブレイクを果たした米国人コメディエンヌだ。ビヨンセやブラッド・ピット、テイラー・スウィフトといったセレブ相手にも大胆なジョークをかまし、頭の回転のはやさと歯に衣着せぬ言動で大ウケしている。
2018年には人気長寿バラエティー番組『サタデー・ナイト・ライブ』で黒人女性としてはじめてホストを務めた功績が認められて、エミー賞を受賞。同年の米タイム誌が発表する「世界でもっとも影響力がある100人」にも選ばれた。
まさに破竹の勢いのティファニー・ハディッシュだが、母親による虐待で保護されて、児童養護施設を転々とする子ども時代を過ごすなど、いまの成功にいたる道のりは決してたやすいものではなかった。いじめられないための武器としての笑いがキャリアの出発点だった。
男性中心のコメディー業界で、スタンドアップなどの舞台を中心に修行を重ねていく過程では、業界の権力者による数々のパワハラやセクハラも経験してきた。
女性が仕事をする過程で突き当たる壁、ネグレクトやパートナーによるDVなどの壮絶な体験を赤裸々につづり、朗読版が2019年度のグラミー賞朗読アルバム部門にノミネートされている彼女の自伝『The Last Black Unicorn』(日本語版『すべての涙を笑いに変える黒いユニコーン伝説 世界をごきげんにする女のメモワール』CCCメディアハウスから2月1日に刊行予定)にも、ひどいセクハラの事例がいくつか記されている。
セクハラに食ってかかかった結果辛酸を舐めても、自分を信じる
たとえば、ティファニーがコメディーツアーを率いる男性コメディアンに前座をやらせて欲しいと頼んだときのこと。男性コメディアンは彼女に前座出演をさせないと断ったうえで、言い放つ。
「俺の目の前に座ってその脚を開いてくれるなら、連れて行ってもいいけどね」
あまりのひどさにジョークかと思ったそうだが、本気なのだと悟り、ティファニーは詰め寄る。
「ちょっと待って。あなたのツアーで前座を務める人は、あなたに対してお股を開かなくちゃいけないって、そう言ってるんですか?」 「俺はゲイじゃない。前座のコメディアン全員とやりたいとかそういうことを言ってるんじゃない。お前みたいに見た目がいい女は、股開いてなんぼだって言ってるんだ」